小さな恋の物語・第三章 初恋 (五枚ほど落書きを追加しました(*^-^*)宜しければ御覧くださいませ♪)

少し時間が空いてしましました、女の子蔵馬ちゃん中学生編でございます。

何故空いたかと申しますと、飛影がね…;
ちょっとあまりにもおこちゃまで…蔵馬ちゃんが可哀想かなぁなんて思って、躊躇ってしまいました(^_^;)←自分で書いといて;
でもやっぱり内容を変えるなんてことは出来なくて( ̄▽ ̄;)
覚悟を決めてアッーーーープ!!


どうぞ暖か~~い目で御覧くださいませ(*^-^*)


あとですね、今回なんか落書きがうまく載せられなくてですね…;PC版だと大丈夫なのですが、スマホだとなんか長細く見えて…。何故?;追記だから?;(何回やり直してもダメだった(T-T))

なので、今回は追記からこちらの本文の方へ移しました。

何でだろ…今までのはそんなことないのに…。


女の子蔵馬ちゃんが苦手な方すみません。









*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…

『小さな恋の物語・第三章 初恋』



夏休みまであと僅かとなった気だるい午後、多感な男子が教室の角に集まりなにやら楽しそうに雑談している。暑さにやられたのか、話題はもっぱら女の子の事。
そんな話題になると、中学生ですでに彼女がいる奴は必ず弄られるもので。


「良いな~、決まった相手がいる奴は余裕でさ。」
クラスメイトが幽助と飛影にぼやく。
「何言ってやがる」そう言い睨みを効かせる飛影と
「うっせぇぞ鈴木!!」と少し顔を赤くして叫ぶ幽助。

「なぁ、もうキスくらいやった?どんな感じ?それとも夏休みに勝負すんの?」
「だから、俺は螢子とはなんもねぇって!」
「またまた~。付き合ってんじゃねぇの?」
「合ってねぇ!」
相変わらず全く進展してない幽助と螢子だったが、周りにはそうは見えてないらしい。
それは飛影も同じで。
「飛影は?もうやった?」
別のクラスメイトの下品な聞き方に溜め息が出る。
「するか馬鹿。」してたとして言うか。「そもそも付き合ってもない」
「えぇ~マジで?まだ?南野さんだぞ?もったいねぇ~!」
「馬鹿馬鹿しい…付き合いきれん。」
散々言われ続けた台詞に辟易といった態度で飛影は席を立った。
「どこ行くんだ飛影!」そう問う友人にも無言。
そして、「俺も…。」と、同じく席を立つ幽助。

「何だよ!浦飯もか?今度聞かせろよな~」

笑いながら念を押す友人達をシカトして二人は教室を出た。







いつものように屋上へ行き、いつものように柵を背に腰を下ろす二人。
30度近い気温のこの時間の屋上はなかなかキツイ場所だが、あの話題の教室にいるよりはるかにマシだった。

タバコに火を点けた幽助は溜め息と共に紫煙を吐き出した。
「全くあいつら…。よくもまぁ飽きもせず。大体幼馴染みってもんが判ってねぇよ。」

相変わらず無口な飛影は何も言わず隣に座り、幽助の言葉に耳を傾けた。

「大体俺ら高校も別だしよ。これからどうなっかわかんねぇっつーの」

幽助は飛影と同じ高校に行くことがほぼ決定している。同じ程度の頭の二人は入れる高校も同じで、選択肢はあまりなく、かなり前から一校に絞っていた。空手部があったのも決めてではあったようだが。
そんな幽助とは違い、優秀な螢子はこのあたりでは有名な進学校に行くらしい。女子高であることにほんの少し安心はしているものの、いつも一緒だった二人が初めて違う道を進むということに僅かながら不安があるようだった。
こいつはこいつで大変なんだな…と、自分を重ねて飛影は思った。


「南野はどこに行くんだろうな」
不意に幽助が呟く。

「あいつ、俺たちの高校まで追っかけてきそうじゃねぇ?」
「なわけあるか。」
のんきにさらっと言う幽助にすっぱりと返した。
内心はそうだったら良いのに…なんて思うが、そんなことは口にしない。
「そうだよな~。南野みたいな奴の行くとこじゃねぇよな。あいつ、螢子より勉強できるらしいぜ。図書館で南野が高校の問題集やってるとこ見たって螢子が言ってたわ。」

「そんな優秀な奴が、俺らと同じ高校なんて入るわけないだろ。」
将来を決める大事な初めの一歩だ。
自分と同じで良いはずがない。

それに
「それ以前に、卒業したら終わる。」
その言い方が、自分に言い聞かせているようで。

こいつも色々あんだな…と同じように幽助も思った。



僅か一学年差。
それでもこの差は飛影にとっては大きい。
中学と高校。それぞれ別々の世界で時が進むのだ。
もう偶然会う事だって無くなる。
飛影の行く予定の高校は、自宅からは徒歩圏内にある学校ではあったが、この中学とは反対方向にある。それ故、通学途中で会う事だって皆無なのだ。



たった一年。たかが中学と高校。
大人になれば大したことなど無い、時間と距離。
だが飛影にはあまりに辛く、遠い。
その苦悩を“卒業まで”と自分に言い聞かせ終わらせようとしている飛影。

一方、同じ時を歩んでいるも、いつも一緒にいた想い人と初めて違う道へと進むことに僅かながら不安を募らせる幽助。

不器用な恋をする悩み多き少年の、夏の午後のひと時である。







***************

「ふぃ~あっちぃ~」
二年の教室の窓際に凭れ、そう叫びながら見えるか見えないかのギリギリまでスカートを捲くりパタパタさせているのは…ぼたん。

「ちょっ…ぼたんちゃん!!スカートそんなんしちゃ駄目よ!!」
慌てて蔵馬が制止した。

女子校ならともかくここは普通の共学の中学校。男子の目もあるというのにそんなことお構いなしといった振る舞い。日々の暑さに羞恥心が麻痺してきているようだ。


「だって…暑いんだもん。あんたさっきまで花壇にいたくせに…暑くないの?」

常にポニーテールのぼたんに対して、常に髪を下ろしている蔵馬は見ているだけで暑苦しい。

「暑いけど…私はわりと平気。っていうか、暑くてもそんな事しちゃダメ!」
そう言って今も尚スカートをパタつかせるぼたんの手を掴んだ。
「じゃあさ、蔵馬、その髪結んでくれる?あんた見てると余計暑くなんのよ。」
暑さで気が立ってるのだろうか…何とも理不尽な物言いである。

「判ったよもう…。でも私あんまり結ぶの好きじゃないのよね…。」

蔵馬が髪を結ぶのは体育の授業だけだった。艶やかな綺麗な髪ではあるが、変わったところに癖がある髪なので蔵馬はあまり上手に結べないのだ。
故に、いつも頭の下のほうにちょいっと一纏めにするだけの簡単な結び方に終わる。

いつものようにポケットに入れてある、ただの黒いゴムで結ぼうとすると、ぼたんがゴムを取り上げた。
「?どうしたの?」


ぼたんが悪戯な目をしていた。







「ねぇ…ぼたんちゃん…なんかジロジロ見られて恥ずかしいんだけど…。」

ぼたんの腕を掴み恥ずかしそうに廊下を進む蔵馬。
その蔵馬に熱い視線が痛いほど降り注ぐ。


あの後ゴムを取られた蔵馬は、ぼたんに「わたしがしたげる!!」と言われ、同じようにポニーテールにされた。
それも「私のお気に入りのリボン貸してあげる!!」なんて余計な申し入れ付で。

しかも「ノド渇いたからジュース買いに行こうよ。おごるから!」なんて言い出す始末だ。
おかげで蔵馬は見世物の用にジロジロ見られている。


普段あまり飾ることをしない蔵馬が、校則違反の大きな白のリボンを付け、しかも髪を高く纏めている。
紅い可愛らしい尻尾がゆらゆら揺れ、滅多に露出することの無い綺麗なうなじがこれでもかと言わんばかりに出ていた。
夏のセーラー服にぴったりのその可愛らしい姿に、男子生徒の視線は蔵馬に釘付けだった。


「な~に言ってんの。可愛いから見てんじゃない。もっと堂々としてなって。」
完全に面白がっている様子のぼたんに「私…こんなジロジロ見られるの嬉しくないよ…。」と項垂れた。




1階の渡り廊下を進み、体育館横にある自販機の前に来た。

「ホント暑いね~。ねぇ蔵馬何飲む?」
「う~んと…、いちごのが良いな。」

そんな会話をしながら飲み物を選んでいる二人に
「あれ~南野?」
と、やけに明るい声が掛かる。


先程まで屋上にいて暑さにやられ、同じように飲み物を買いに来た幽助と、飛影だった。
「どうしたんだよソレ!!めっちゃ可愛いじゃん!!」
「あ…有難うございます…。」
幽助の素直な賛辞に恥ずかしそうにお礼を述べる蔵馬。
そして、
「あたしがしたんですよ~。暑苦しいから。可愛いっしょ?」と、何故か得意気なぼたん。
「おぉ可愛い可愛い!さっき廊下で男子が騒いでたのはこれでか~。」
「そうなんですよ!あまりの可愛さに、も~大注目でしたよ!ていうか私だって同じ髪型なのに~。」
「そりゃおめぇ素材が違うからだろ。」
「え~幽助先輩ひどい!まぁこの可愛さじゃ仕方ないかぁ。」

蔵馬を見ながら本人を無視してなにやら盛り上がる二人。
「ちょ…やめてよ!ぼたんちゃん!そういうんじゃないよ!私普段は髪結ばないから…それで…。」
その盛り上がりを蔵馬は慌てて制止した。
飛影の前であまりに『可愛い』を連呼され、恥ずかしさで真っ赤になる。
いつもは真っ先に飛影に挨拶をするのに、はしゃぐ二人のせいですっかりタイミングを逃した。
それどころか飛影の反応が怖くて顔も見れない。


だが実は、飛影もそれどころではなかった。
彼もまた、蔵馬の可愛さにやられた男子生徒の一人で…。
暑さなんて一気に吹っ飛ぶほどの、夏の日差しがよく似合うキラキラ輝くようなその姿に、完全に言葉を失っている。

ただ、飛影を見れない蔵馬と違って、飛影は蔵馬を凝視したまま固まっていた。

「そんなわねぇだろ~可愛いからに決まってんじゃん!なぁ飛影?」
その言葉に飛影はハッと我に返り、蔵馬はビクっと肩を振るわせた。

その我に返った飛影の目に飛び込んできたもの…離れた場所から蔵馬を見る何人もの男子生徒。
同じように自販機に向かう生徒達もジロジロ見ている。
よく判らない感情が噴き出そうとしていた。

挙句、幽助まで「も~螢子なんて止めて南野にしようかな」なんて言い出す始末。

幽助だけはこいつをそんな目で見ないと思っていたのに!!

もちろん幽助は冗談で言ったに過ぎないのだが、すっかり冷静さを欠いている飛影には充分すぎるほどの爆弾だった。

「も~何言ってるんですか…。」
笑いながらそういう蔵馬にも腹が立つ。
「そうですよ!雪村先輩にぞっこんのくせに!」
そもそもこいつがこんなアタマにしたから…!!

飛影はもう自分でも訳が判らない怒り方をしていた。

「あの…先輩…?どうかされました?」
無言の飛影に気付き、蔵馬が声を掛ける。
だが。
おずおずと聞いてくる可愛らしいその顔も、声も、今の飛影にはイラつかせるだけ。

「何だよ飛影。さっきの冗談だぜ?妬くなよ~。」

ぷちっ

大して強くない飛影の堪忍袋の尾が、静かに切れた。

「妬く、だと…?」
「え…と…飛影…?」飛影の静かな重く低い声に、さすがの幽助もたじろぐ。
先程まではしゃいでいたぼたんは一気に蒼白だ。

「俺がこんな奴のことで貴様に妬くか!!」
一瞬で傷付いた表情になった蔵馬を見て幽助が焦る。
「お、おい…飛影…!」
止めとけそれ以上言うなよ!!

幽助の心の叫びは飛影には届かず、飛影は鋭い視線を蔵馬に向けると
「お前も、そんなナリしていつも以上に注目浴びてご苦労なことだな。そんなに嬉しいならあいつらに手でも振ってやったらどうだ。」
あんまりな台詞を吐いた。

「ちょ…そんな言い方…!!」
「ぼたんちゃん!!」
今にも飛影に食って掛かりそうなぼたんの腕を掴んで止めると、蔵馬はリボンを解き、ぼたんに渡した。

「これ、返すね…。あと私、午後の授業パス。先生に上手く言っといて。」
そう告げると裏庭の方へ駆けて行った。
「蔵馬…っ!!」
追いかけようとしてぼたんは止めた。こんなとき蔵馬は一人でいたい筈だと理解している。

代わりに飛影をキッと睨み
「馬っ鹿野郎!!」
怒鳴り付け、どかどかと立ち去った。


残されたのは、俯き、バツの悪い顔をしている飛影と、自分の失言を後悔しまくっている幽助。
でも
「飛影、おめぇよ…あんな言い方ねぇだろ?南野の気持ち判っててよ…。」
とりあえず親友として一言、言っておきたい。
「それとも…あんな冗談も通じねぇほど南野にハマってんのか?」


…あぁ、そうだ…。あんなことに我を忘れるほど…。
またあいつを傷付けた。
これだから嫌なんだ。あいつと一緒に居ると、きっとこんなことばかり起こる。


無言で立ち尽くす飛影に、全てを理解した幽助は、
「ワリ…。」と小さく謝った。


お前は悪くない。悪いのは俺だ。
そう、言いたいのに、そんな言葉も出てこない。

「…行こうぜ、飛影…。」
素直じゃない親友を気遣い、幽助はそれ以上は何も言わず、飛影の肩を組み教室へと歩き出した。
瞳を伏せ、俯いたまま何も言わず歩く飛影の姿が酷く弱々しく見えた。






***********
本日の授業の終わりを告げるチャイムが校内に鳴り響いた。

部活へと急ぐ者、家路に向かう者、生徒は次々と教室を出て行く。
いつもは幽助も飛影と一緒にすぐに教室を出て幻海の道場へ行くのだが、あれから全く言葉を発せず動きもしない飛影に自分もどうしたものか悩み、席を立てずにいた。

「あー…と…、どうする?今日は道場は止めてゲーセンでも行くか?」

自分の後ろの席で俯く飛影に思い切って声を掛けた。
尚も自分に気を遣ってくれている幽助が何だか可笑しくて、飛影の口元がわずかに緩む。

「…いや…いい…。」
薄っすら笑い、やっと口を開いた飛影に幽助は安堵し、次の言葉を待った。

飛影はゆっくり席を立ち、鞄を持つと「寄るとこあるから、先に行ってろ」と残し教室を出て行った。
どこに行くのかは言わずとも判る。
いつもは「南野によろしくな~」なんてからかう幽助もこの日ばかりは無言で見送った。

と、そこに隣のクラスからやってきた桑原の元気な声が。
「あれ?飛影どこ行くんだ?道場行かねぇのか?」下駄箱のある玄関とは反対に向かう飛影を不思議に思い、桑原が問いかけた。
「あぁ…幽助と先に行ってろ。」
どこか元気の無い声。
飛影の様子がいつもと違い、でも本人に理由は聞けず、桑原も黙って飛影を見送る。
その代わり自分に近付いてきた幽助に訪ねた。

「な…なぁ飛影の奴どうしたんだ?なんかあったんか?」
「ほっといてやれ。行こうぜ。」

幽助は何も語らず桑原の腕を掴み、玄関へと向かった。
素直じゃない飛影に自分を重ね、少しは螢子に優しくしてやろう…なんて柄にも無いことを考えながら。







放課後の校舎裏は西日が差し、昼間より暑く感じる。ジワリと掻いた汗がカッターシャツに染み込んで気持ちが悪い。襟元を掴みパタパタさせながら飛影は裏庭へと向かった。


蔵馬は放課後も大抵裏庭に居る。
授業が終わると学校内の花壇をすべて回り、丁寧に花のお世話をして、最後に裏庭に来てぼたんの部活が終わるのを待つ…というのが日課だった。
以前そんな話を聞いていた飛影は、ここで見回りを終えた蔵馬が来るのを待つつもりだった。

待つのはあまり好きではないが、今日はいくらでも待っていよう、あいつのように。

そう思ったのだが、それは必要なかった。

まだ誰もいないと思っていた裏庭に、愁いの色を浮かべた少女が一人。


蔵馬はいつも飛影が座っているベンチに腰を掻けていた。汗を拭う為か、涙を拭く為なのか、手にはハンカチが握られており、視線はそのハンカチに向けられたまま動かなかった。髪はいつも通りに下ろされていて、飛影の胸がちくりと痛んだ。


まさかあれからずっとここに?  
あれから三時間近く経った。
何も遮るものが無い真夏の炎天下の下、ずっとここに座っていたのだろうか…。

罪悪感から足早に蔵馬に近付いた。
その足音に気付いた蔵馬が顔を上げる。


視線がぶつかり…言葉が出ない。


悪かった。
そう言うつもりだったのに。

そして、できたら、似合っていたと。
そう、言うつもりだったのに。



今まで本気の謝罪などしたことが無い飛影は、いざその直面に立つと何も言えず、ただ俯き、拳をグッと握り締めることしか出来なかった。


そんな飛影に思いもよらない言葉が届く。
「あ…先輩…やっぱり…」
驚きを隠せず、目を見開き蔵馬を見詰めた。

「飛影先輩…優しいから…もしかしたらさっきのこと、気にして来てくれるんじゃないかなって思っちゃって…。そう思ったら帰れなくて…。良かった…ここに居て…。」
エメラルドのように美しく潤んだ瞳で飛影を見上げ、嬉しそうに微笑む。
さっきまで確かに愁いを帯びていたはずなのに。


なんで…どうしてお前はそんな…。

飛影の爪が更に掌に食い込んだ。


「先輩の前で可愛いってたくさん言われて…ちょっと嬉しくて…調子に乗っちゃったから…。」

そんなことも無いだろう。
ホントに、似合ってた…。

「先輩にああ言われて恥かしくて…逃げ出しちゃいました…。」

嘘付け。傷付いた顔してたくせに。

「だから先輩、気にしないでくださいね?」

自分は傷付いてなんかいない、そう言いたいのか。
俺を気遣って。
何で…

「なんで…お前は…。」
やっと出てきたのはまたもや蔵馬を攻めるような言葉。そんな自分に嫌気が差す。
それでも蔵馬の顔は笑顔のままで。
飛影の心臓が締め付けられるように痛んだ。


「なんでそこまで…。俺の、俺なんかのどこが良いんだ…。」

ずっとずっと疑問に思ってたこと。でもそれは蔵馬の想いが本気だと認めるもので。
「嬉しいです…。やっと、判ってもらえた。」
蔵馬はまた嬉しそうに微笑む。

「先輩を好きな理由…私にもよく判らないんです。もちろん外見も性格も好きなんですけど。これだから好きだ…っていうのはよく判らなくて。上手く説明できません。
ただ、どうしようもなく惹かれるんです。先輩に。

ほら…好きになるのに理由は要らないってよく言うでしょう?」



そう言う蔵馬の顔は本当に綺麗で…
夏のせいではない熱が顔に集まった。


ただ、どうしようもなく惹かれる。
その理由なんてない。

あぁ、そうだな。よく判る…。
俺も、そうだと言いたいのに。
お前の最高の笑顔が見れると、判っているのに。



きっと今以上に蔵馬を傷付けてしまうという確信と、その度に自己嫌悪で苦しむであろう自分。
そして、この後必ず訪れる別離。
蔵馬を手に入れた後にあるいくつもの不安要素が勝り、飛影にはどうしても言えなかった。



暫しの沈黙。
その沈黙を破ったのは、やはり、蔵馬。

「あ…じゃあ、私、ぼたんちゃんのところに行きますね。来てくださって、有難うございました。」
何も言わない飛影を責めることなく立ち去ろうとして

ペタリ、としゃがみ込んだ。

「!!!!南野…?!」

慌てて蔵馬の肩に手を沿え顔を覗き込む。

目が虚ろで呼吸が荒い。
この気温にも関わらず汗もあまり出ていない。

「ごめ…なさ…い。ちょっと…眩暈がして…。」


熱中症、か?

「ちょっと待ってろ!」
何か水分を…そう思い立ち上がろうとして蔵馬に止められる。
「っいいです。大丈夫…立てます。」
「座って待ってろ。何か飲む物買ってくる」

動こうとする蔵馬の肩をグッと押さえ走り出した。



早く…早く…!
くそっ何で気付かなかったんだ。

保健室に行くほうが先か?
いや、どの道水分はいるだろう。


自分を責め、思案し、自販機の前へ。
小銭を入れる手が震え、
「ちっ…。」
舌打ちをしながらスポーツドリンクのボタンを押し取り出す。
その動作ももどかしい。

そして再び蔵馬の元へ駆け出した。







裏庭に戻ると、蔵馬は先程の体勢のまま地面の上に座り込んでいた。長く感じたがそれほど時間は経っていないようで少しホッとする。
だが両腕は体が倒れこまないように支えられており、辛そうなのは見て取れた。


「南野…水分を摂れ。」
息を切らしながら近付く飛影を見上げ、ペットボトルを受け取る。
「有難うございます。すみません。」

飲もうとして…蓋が開けられず…
飛影がひょいっと取り上げ、少し蓋を捻り再度蔵馬に渡す。

お礼を言うように少し微笑んで、一口、二口、潤んだ瞳を細めてゆっくりと飲む。その表情が妙に艶かしく、飛影は目を逸らした。

馬鹿か俺は…こんなときに。

軽く自己嫌悪に陥る飛影を他所に蔵馬が小さくクスッと笑う。
「初めて…先輩に何かもらったの。嬉しい…。」
「な、に言ってやがるんだ。こんなときに」
どの口が言うか!自分を殴ってやりたい。

「…吐き気とか、頭痛とか無いか?」
沸き上がった邪心をはね除けるように、出来るだけ優しく聞いてやる。

「だ…いじょうぶです。」
案の定な答えに溜め息が出た。
本当ならここで抱きかかえて保健室まで…というのが理想なのだろうが、中学生の自分が同じ年頃の女子を抱えるのはいろんな意味で無理がある。
早く成長したい。
身体も、中身も。


「ホントに、大丈夫です。立てますから…。」
力無く立ち上がると、少しふらつきながらも足を出し歩こうとする。

腕くらいなら、と飛影は蔵馬の腕を掴んだ。

「あの…?」
「保健室まで…連れてってやるから、少し横になれ。」


飛影の掴んでいる手の熱さに、蔵馬の頬が紅く染まる。
それは飛影も同じで。

初めて直に触れる蔵馬の肌の感触は、15歳の飛影にはあまりに刺激が強く、自分も倒れるんじゃないかと危惧するほどだった。

必死に自分の理性を保ち、沸騰寸前の頭をどうにか静め、保健室の前に来た。
放課後の校内は静まり返っており、途中誰にも会わなかったことが救いだった。

飛影が保健室の扉に手を掛け、動きが止まる。

「ちっ…もう帰りやがったのか…。」
保健室には鍵が掛かっており開かない。
部活で怪我をする奴だっているかもしれないのに…。
「あの…先輩、私ホントに大丈夫ですから…。」

気遣う蔵馬は無視して、飛影はポケットから針金を出した。
不思議そうに見詰める蔵馬。

針金を扉の鍵穴に差し込み…

「え…?」

簡単に開いた。

「あ、あの…先輩…?」
驚く蔵馬を引っ張りベットの前に連れて行く。
「気にするな。生徒がまだいるのに帰るほうが悪い。いいからさっさと寝ろ」

いえ…あの、私が気にしてるのはそこじゃないんですけど…。

困惑の顔を向ける蔵馬に気付き、あぁ、と呟くと
「屋上に行くときに使うから、いつも持ってる。
それ以外で使うのはこれが初めてだが、上手くいった。」
と説明した。
「すごいですね…。」
何だか感心してしまう。

「褒めるトコでもないだろ…。いいから入れ。」

困ったように言う飛影に少し笑って蔵馬はベットに入り、枕の横に持っていたドリンクを置いて横になった。
それを確認すると、飛影は保健室の窓を開け、天井に付いている扇風機のスイッチを入れ、再び蔵馬の傍に戻る。

「お前のあのぼたんとかいう友人には伝えておいてやる。すぐに来ると思うが、それまでは寝てろよ」

相変わらず乱暴な言い方だが、声のトーンが優しい。
心に沁みるようで涙が込み上げた。

「…バカ…無駄に水分を出すな。」
呆れた様に言うその言葉も優しくて…。とうとう雫が零れ落ちる。
泣き顔を見られないように布団で顔を覆ったが、夏用の薄い布団は震える身体を隠しきれず、あまり意味を成さない。

蔵馬のか細い小さな声が飛影に届く。

「ごめ…んなさい…。先輩があんまり優しいから…嬉しくて…。」

優しいのはお前の方だろう…。


「ホントに…有難うございます…。」

礼なんか要らん…。





「…大好きです…。」

…俺もだ…。



言葉に出来ない想いを心の中で告げ、飛影は保健室を出た。


扉を閉め、掌を眺める。先程蔵馬の腕を掴んだそれ。

自分に湧き上がった邪な想いに気分が沈む。



あいつはあんなに純粋に俺を想ってくれているのに。
あいつの気持ちにも応えられず、抱えて来てやることも出来なかったくせに俺は…。



苦悶の表情を浮かべ、飛影はぼたんの居る体育館へと向かった。



少し傾き始めた夏の太陽が飛影の瞳をさらに紅く染める。
その瞳がほんの僅かに潤み、より一層紅く輝かせていた。





第三章 終わり

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


好きだよと言えず~に初ぅ恋はぁ~♪
(村下孝蔵『初恋』)

そんな感じの飛影です(^_^;)


長ったらしくてすみません;
二つくらいに分けようと思ったのですが、そうすると飛影の酷さが際立つなぁと思い、読んでくださっている方に安心頂くためにもここは一気に!と思いまして、一つに纏めました(^_^;)

そして、蔵馬ちゃんを悲しませてしまってごめんなさい!!(ノД`ll)
でも、これでお分かり頂けたと思います。高校生の飛影が何故にあんなにも蔵馬ちゃんに甘いか!
そうです、彼は罪悪感の塊なんですよ;
中学時代にたっくさん悲しませてしまった後悔から、飛影は『二度と蔵馬を悲しませない!』と固~く決心しているのです~(*^-^*)
だから狼の着ぐるみも着るし、運動会では二人で走っちゃう♪

ですので、中学時代これでも必ずやラブラブになりますので、その辺はどうぞご安心して御覧くださいませ(*^-^*)
(てゆーか、私はこの二人が別れるなんて話しは描けませんので…( ̄▽ ̄;))




ここまでお読みくださいまして本っっっ当に有難うございました.。゚+.(・∀・)゚+.゚



拍手有難うございます~!!
もぅめっちゃくちゃ嬉しいです~☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆☆*:.。.

鉛筆白書(クリスマス直前の様子・飛影くんと蔵馬ちゃんの場合)

飛影と過ごすクリスマスをとても楽しみにしている蔵馬ちゃんですが…。
プレゼントはどうするか悩んでおりました。


「ねぇねぇ!蔵馬。飛影先輩へのプレゼント、これなんてどお?」

「これって…下着…?;女の子の…?(しかもかなりキワドイ…/////)」



「だ、か、ら、これを着けてね、『私がプレゼントよ~』って。」

なっ!?;ぼたんちゃんてば!!」


「そっそそそそそそんなこと!恥ずかしくて出来るわけないでしょ?!てゆーか、飛影も引いちゃうよ!!

「え~~~~?引かない引かない。残念~~~。先輩、すっっっっっごく喜ぶと思うんだけどなぁ~~。」


「え…ほんと…?すごく?」

「うんうん。すっっっっごく!

「……。」





その頃、二年の教室…。


「飛影、クリスマスさぁ、南野に何やるんだ?」

「まだ決めてない…。」

「これなんてどーだ?」

「あ?…下着?」



「俺へのプレゼントはこれを着けたお前だ~…なんつって、盛り上がんだろ?渡した後も楽しめっぞ?キヒヒ」

「は?!」


「アホか貴様!!
そんなもん、貴様が雪村と好きなだけやってろ!!」


「あー?けーこ?ダメダメあいつはこんな冗談つーじねーもん。下手したら殺されるぜ; 全く、男のロマンってもんが判ってねーよな。


「その点南野は素直だし、お前にべた惚れだし?絶対喜んで着けてくれるぜ~♪か~この幸せ者!!

(絶対?喜んで?…ホントか?)




二人のクリスマスプレゼントリストに『蔵馬の下着』が加わりましたとさ(笑)


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

コメント御礼~♪


☆とろみさま
コメント有難うございます!

コンビニ蔵馬くん、サンタ帽似合いそうですよね!?黄泉店長ナイス!(*^m^)o==3プッ

でもあまりの可愛さに飛影先生は気が気じゃなくなりそうです。
も~早く唾付けちゃいな!!(笑)

追加落書きも楽しんで頂けますように…(*^-^*)

私の妄想にもいつもお付き合い下さって有難うございます!
いえいえこちらそこ、いつも楽しませて頂いておりますよ♪

ホントに、飛蔵妄想はこれだけで酒の肴になるわ!(*^m^*) ムフッ

また是非お付き合い下さいね♪



☆ゆきさま
さすが、ゆきさま!
お分かりになりましたね!!( ´艸`)ムププ
そうです!『南野に猫耳サンタ帽かぶせ隊』が他の店員によって結成されたのです!黄泉店長が率先しました!!
わざとあれだけ残したんですよ♪
クリスマスに向けての集客狙いですな。

もし、宜しければ追加落書きもご覧頂けたら嬉しいです(*^-^*)
蔵馬くんが乙女です( ̄▽ ̄;)


媚薬攻め飛影も反応して下さって有難うございます~(*^▽^*)
媚薬で本能丸出しでドSになった飛影…
たまんないですよね!
そんな飛影に蔵馬さんがめちゃめちゃにされちゃえば良いですよね!(艸д゚*)ィャ→ン♪

うふふ♪
えぇ、もちろん!きっとまた妄想してしまうと思います(*^-^*)
もうネジは捨ててきましたので(笑)
その時はまた絡んでやって下さいませ~(*''ω''*)

コメント有難うございました!!






拍手有難うございます~(*^▽^*)
幸せいっぱい心ポカポカです♪

小さな恋の物語・第二章 act.2 恋、煩う。

素直で直向きな女の子蔵馬ちゃんと、素直じゃない飛影のピュアラブのお話しの続きです。

長いと思いますが、最後まで読んでいただけたら幸せです(*^-^*)


それでは追記よりどうぞ~♪







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小さな恋の物語・第二章 act.1 直向きな少女 お絵描き少し載せました♪よろしかったら御覧くださいませ(*^-^*)

先輩飛影くんと、女の子蔵馬ちゃんの甘酸っぱいお話しの続きです。

告白したその後、です。


少し長めですが、最後まで読んでいただけたら嬉しいです!
引き続き温かい目で… (*´ω`*)ゞエヘ



それでは、追記よりどうぞ~(*^-^*)





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小さな恋の物語・第一章 act.4 想い、想われ。

蔵馬ちゃんと飛影先輩の甘酸っぱいお話しの続きです。

まただらだらと長いですが最後まで読んで頂けたら嬉しいです(*^-^*)

それでは、追記よりどうぞ~(^∇^)






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プロフィール

舞彩

Author:舞彩
名前/舞彩(マイ)
生年月日/19××年2月3日
出身地/一番人口の少ない県
趣味/飛蔵(蔵飛も少々)のお絵描きやお話し作り。カラオケ。冬限定で編み物。ダイエット(悲しすぎる趣味)
好きなモノ/飛影と蔵馬!!
チョコレート。和菓子。メロンパン。カフェオレ。紅茶。通販雑誌(見るだけってやつ)
嫌いなモノ/カメムシ(殺虫剤で死なない恐ろしい虫!)、カエル、シイタケ、グリーンピース
幽白歴/約22年。昔と変わらず(それ以上?)今もこの作品、そして飛影と蔵馬を愛しています!

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