月と土星

僅かに秋の気配がする晩夏の夜、突然窓を開けた蔵馬が夜空を見上げた。
部屋の中に漂う夜風。
窓の下からは虫のキレイな音色が奏でられ、何とも良い風情を演出している。

突然の訳のわからない行動に怪訝な表情を浮かべた飛影だったが、頬に当たる風が心地よくて、何も言わずベットに横たわったまま蔵馬を見詰めていた。
後ろ姿からは蔵馬が何を思ってそんな行動を取ったのか判らないが、何かを探しているように見える。

「飛影、ちょっと部屋の明かりを消して貰えますか?」
夜空を見上げたままこちらを振り向きもせずそうお願いする蔵馬に、小さく舌打ちをしながらも、飛影は言われた通り部屋を暗くした。

一瞬にして暗闇が部屋を包み込む。
窓からほんの少し差し込む月明かり。

「あ!見えた!!」
突然嬉しそうに声を上げた蔵馬。
「…何がだ…;」
そんな蔵馬の後ろに立ち、飛影は呆れたように溜め息混じりで尋ねる。

「ん?今ね、天気予報を見てたんだけど…」
左手に持っているスマホを少し上げ続ける。
「今日は月と土星がすごく近付いて見える日なんだって。」
「どせい?」
なんだそれは。と言いたげな表情。
魔界生まれ魔界育ちの飛影が宇宙の天体など知る由もない。
予想通りの反応にクスリと笑いながら「こっちに来て」と手招きをする。

「ホラあそこに月があるでしょ?そのとなりに…」

「あのわっかのあるやつか?」
飛影の言葉に驚き隣を見ると邪眼が開かれていた。
「うん、そう…そのわっかのあるやつ。綺麗でしょ?っていうか… 邪眼って天体も見れるんだ~。望遠鏡いらずだねぇ。良いなぁ~。」

素直に羨ましがる蔵馬に飛影の口元が緩む。
すぅっと手を上げ、蔵馬の額に当てると…
「まぁ限界はあるがな。…目を閉じてみろ。」
そう促した。
「うん…。」
瞳を閉じた蔵馬の額に飛影の妖気が集まる。すると…
「うわ…綺麗…。」
瞼の裏に映し出された土星。
取り囲むリングもハッキリと見える。

「すごい!こんなにハッキリ見たの初めて!なに?念写?」
翡翠色の瞳を輝かせ喜ぶ蔵馬に飛影は満足そうに手を離し、
「で、あの星が何だって?」
先程の蔵馬の話に戻した。

「あ、そうそう、ホラ月の横に寄り添うように見えるでしょ?天気予報のとこに『月と土星がランデブー』なんて書いてあってさ、せっかくだし見えるなら見たいなぁと思って。それだけ♪」
一体何がそんなに楽しいのか判らないが、ニコニコと笑いながら話す蔵馬に少し呆れつつ、拍子抜けした飛影。

てっきり…
「それだけか?七夕みたいな話があるんじゃないのか。」

まただらだらと物語を聞かせられるのだと覚悟していたのに。

「うーん…どうだろう…。惑星が発見されたのは人間の歴史の中でも最近の事だからね~。 占い的なものはよく聞くんだけど。 」
飛影が自分の話を聞く体制であったことに気付き、さらに嬉しそうに話す蔵馬。
黙ったままの飛影を『話しても構わない』と、解釈した蔵馬はさらに続ける。


「土星の向こうには天王星っていう星があるんだけどさ、それが見付かるまではずっと土星が一番遠くの星だと思われてて、この世の果てを表す星だったんだって。だから、不吉なことは全部土星のせい…みたいな感じだったみたい。いい迷惑だよねぇ。あんなに綺麗なのに。」

「ただそこに存在しているだけなのに不吉の象徴か。確かにいい迷惑だな。」
意味深な言い方をした飛影に蔵馬が優しく微笑んで返す。
「あ…今自分みたいって思ったでしょ?」
全くもう…


少し困ったように言いながら立ち上がると、部屋に備え付けてある小さな冷蔵庫から缶ビールを二つ取り出し、一つ飛影に渡した。
プシュッと良い音が小さく響く。

「ハイ乾杯☆」
コツンと缶を当て呑み始める。

「でも、そうだね。飛影みたいかも。」
一口呑んだ蔵馬が再び話し始める。
飛影は黙ったまま缶に口をつけ、呑み進めている。
「よく知られてなくて、相手に悪い印象を植え付けちゃうとことか?」
俺だって初めて会ったときは最悪だったよ~。何せイキナリ切りつけられたんだもん。そのあとだって…ちっとも優しくしてくれないし。


相変わらずクスクス笑いながら話す蔵馬。

「でもさ、技術が進むとどんどん鮮明に見えるようになってね、あの土星の魅力的な形が人間の心を掴んだんだろうね。今はすごく人気者なんだよ♪
うん、飛影っぽい~♪」

「誰が人気者だ、誰が。酒一口で酔ったのか貴様。」
からかうような言い方に飛影が少し不機嫌そうに口を開いた。

そんな飛影をものともせず話しを続ける。
「えー?飛影は人気あるよ~?躯だって時雨だって、百足の人たちも皆、貴方のこと気に入ってるじゃない。

それに。
幽助や桑原くん、ぼたんにコエンマ、…雪菜ちゃんだって、貴方をよく知る人たちはみ~んな、貴方が大好きだよ?

まぁ俺はそんな人たちなんか足元にも及ばないくらい、貴方の事『愛してる』けどね?」

にっこりと、極上の笑顔で愛の言葉を紡ぐ蔵馬にさすがに恥ずかしくなり、顔を背けごくごくとビールを飲み干した。

「今日の月みたいに、ずーっと貴方に寄り添ってるからね。」

「ふん…。」

テーブルに缶を置き、照れ臭そうに蔵馬を睨み付ける飛影。

その鋭く暖かい深紅の瞳に、蔵馬の核が跳ね上がる。


この輝きに自分は何度魅入られた事だろう。
もっと近くで…近くで、見たい。


それはきっと、この星の人間たちが宇宙に思いを馳せる気持ちとよく似ている。
もっと近付きたくて、もっと知りたくて…。
その想いは果てることなく続いていく。




蔵馬はまだ半分残ったビールをテーブルに置くと、吸い寄せられるように飛影の唇に自分のものを重ねた。

「うん、やっぱり月は嫌だな。」
そっと触れただけの唇を離すと、蔵馬が飛影を見詰めたままそう告げる。

「寄り添うだけじゃ寂しいね。重なりたい。」




これ以上ない蔵馬の誘い文句に飛影の理性が消し飛んだ。

窓が開いていることも忘れ部屋の片隅で重なり合う。



気付けば月と土星は闇の彼方へ消え、空には星だけが輝いている。

その輝く星も霞んで見えるほど、二人は目の前の緋と翠の輝きに魅入られ、お互いを強く求め合っていた。


「どうした…今日は…。やけに目を閉じずに頑張るな。」

いつもと違い、瞳を開けたまま自分を見詰める蔵馬をからかうように飛影が囁く。

その艶のある低い声に羞恥心が煽られる。思わず顔を背けそうになるが、どうにか耐えた。


「う、ん…。何か今日は…見て、たいなって…。」

飛影が与える律動に揺さぶられ、意識まで飛びそうな快楽の中、必死に言葉を紡ぐ。

「だ、から…飛影も、目…閉じっ…ないで…俺の事…見てて、ね?」


まるで煽るかのような蔵馬の言葉と態度に、飛影の欲がより一層駆り立てられる。
「あぁ…。望むところだ。根を上げるなよ?」
手加減しないからな。

不適な笑みを浮かべ呟くと、飛影は再び身を進め、蔵馬を深い快楽へと引きずり込んだ。



もっと近くに、
もっとそばに、
瞳から伝わる尽きることのない想い。

互いの色に包まれ、その輝きに酔いしれながら、二人は本格的に訪れた夜の帳に身を任せた。






おわり






土星関係なくなっちゃった(^_^;)

そして月と土星と一緒に火星も見えてるはずなんだけど…まぁ、いいか;





長々と失礼しました(^_^;)
日曜日、スマホで天気予報を見てましてね、そしたら本文中にあるように『月と土星がランデブー』なんて文字が目に入りまして…。

ちょっと書きたくなりました。
好きなんですよ、星…(*^-^*)
でも、やっぱり一日で仕上げると言うのは無謀でした;(当たり前だ!)


すんません…(-_-;)

でも、久々にパラレル以外のお話しで、書いた私はとても楽しかったです~♪指疲れたけど(笑)

ここまで読んで頂いて有難うございました!



拍手有難うございます!!
本当に嬉しいです~(*´∀`*)
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プロフィール

舞彩

Author:舞彩
名前/舞彩(マイ)
生年月日/19××年2月3日
出身地/一番人口の少ない県
趣味/飛蔵(蔵飛も少々)のお絵描きやお話し作り。カラオケ。冬限定で編み物。ダイエット(悲しすぎる趣味)
好きなモノ/飛影と蔵馬!!
チョコレート。和菓子。メロンパン。カフェオレ。紅茶。通販雑誌(見るだけってやつ)
嫌いなモノ/カメムシ(殺虫剤で死なない恐ろしい虫!)、カエル、シイタケ、グリーンピース
幽白歴/約22年。昔と変わらず(それ以上?)今もこの作品、そして飛影と蔵馬を愛しています!

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