小さな恋の物語・第4章 決意と覚悟。

やはり、仕事明けで買い物に行って絵を描く気力は無かったヨ(^_^;)

蔵馬ちゃんのホワイトデー話しもまだ出来ないので、先に出来ている『小さな恋…』をアップしたいと思います。



これも予定より遅くなってしまいましたが…;

女の子蔵馬ちゃんが平気な方はどうぞ読んで下さいませ(*>ω<*)


それではどうぞ~♪



第4章・ 決意と覚悟

「う~ん…まぁ多少の問題はあるものの、お前は元々やればできるやつだし、大丈夫だろう」

秋の終わりに行われる進路決定の面接、学力テストを前に飛影はコエンマと教室で向かい合っている。
志望校は変わらず、幽助と同じ高校だ。

一、二年のサボリが響き、三年になったばかりの頃は合格圏ギリギリの飛影だったが、さすがに三年になるとそこまでサボる事も無くなり、コエンマも言ったとおりやれば出来る奴なので、今は余裕の合格圏内になっていた。

正確には、あの夏の日から…だが。

夏の出来事以降、飛影は真面目に学校に来て授業を受けていた。

蔵馬への想い、自分の想い、考えていると苦しくて頭がおかしくなりそうで、何かしていないと落ち着かなかった。
朝から学校に来て、授業を受け、昼休憩には屋上で勉強する…といった有様だ。夏休みは生まれて始めて図書館で勉強した。
そんな飛影に一番驚愕していたのはいつも一緒に屋上に行く幽助。
だが、自分の前で黙々と参考書を読む飛影に感化され…たのか焦ったのか、次第に一緒に勉強するようになり、おかげで彼も余裕…とまではいかないが合格圏内になっていた。




飛影はあれ以来裏庭に行っていない。
朝から遅刻せずに来ているのに、蔵馬に会わないように裏の抜け道から入る徹底振り。

蔵馬への想いを痛いほど思い知らされた飛影。
その苦しさから出した答えが、会わないこと、だった。
三年だから、受験生だから、勉強するから、無理に口実を作ってあの裏庭へ行かなくて済むように。

会わなければきっと忘れられる。
いや、忘れよう。


今はまだ同じ学校に居るから時々は思い出してしまうけど、卒業してしまえばきっと。
あいつだって…。

そんな思いで日々が過ぎるのをただ耐える毎日。





「安心して卒業できそうだな飛影、ワシも一安心だ。
悔いの残らないように、残りの学校生活も頑張れよ。」


すべてを見透かしたようなコエンマの台詞に、軽く舌打ちをして飛影の面接は終わった。
教室を出て先に面接を終えた幽助の元へ行く。

三階から一階へ、幽助が待っているはずの玄関へ向かう。
最後の段を下り、角を曲がると玄関。曲がろうとして…慌てて隠れた。



蔵馬が、いた。


玄関の下駄箱の前、幽助となにやら話していた。
蔵馬はこれから校内の花壇の手入れなのだろう、ジャージ姿だ。飛影を待っていている幽助と偶然会った…といった感じだ。

時折聞こえる笑い声に少しの安堵と、嫉妬。


幸い、蔵馬は飛影に対して背を向けていたため見付からずに済んだ。

だが…。



「おい、飛影…何隠れてんだよ。おめぇらしくもねぇ。」
やはり、幽助には見付かっていた。
暫くして蔵馬と話を終え、角の向こうに隠れる飛影の元に来た幽助。
誰かに会いたくなくて隠れる…なんてキャラに合わないことをしている飛影にただただ驚くばかりだが、事情を知っているだけにそれ以上は突っ込まない。
ただ、一言、「あいつ、元気無かったぜ…。」とだけ伝え、いつもの道場へと向かった。





「俺らしくない、か…。」
道場の帰り道、学校の玄関で幽助に言われた事を思い出しポツリと独り言を呟く。

本当に…何をしてるんだ俺は…。



あんなに意識しまくって。
“元気が無かった”
それが俺に会えないためだと、まだ想われていると、喜んでいるくせに。


全く…どうかしてる。


深い溜め息を吐き夜道を進む。
時折自分を照らす寂しげな街頭がさらに気分を沈ませた。









**********

蔵馬が元気が無いのも無理は無い。
もう四ヶ月、飛影に会っていないのだ。
以前幽助から聞いた話では受験勉強で忙しい…らしいのだが、それにしても、である。

裏庭へはもちろん本人が来てくれなければ会えないのだから仕方ないとして、校内でも全く見かけない。唯一のチャンスである体育の授業は教室の窓からかろうじて見かけることは出来たが、1年の時と違い、窓からの距離が遠くて移動中もなかなか声を掛け難い上に、いつの間にか校庭にいていつの間にか教室へ戻っている…という感じで、しかも冬は体育館での授業になるため、その姿さえ見られない。

もちろん、想っているだけで良いという言葉に嘘偽りは無いわけで、会えないからといって忘れるわけもそのつもりも無いのだが、刻々と迫る卒業というタイムリミットに焦らずには居られない。


「何か…私…避けられてるのかな…。」

昼休憩、いつもの裏庭でバラに向かって呟く。
12月は晴れていても寒く、コートのフードをこっぽりとかぶった。
そして、
自分で言ってかなり凹んだ。


避けられている?
でも、先輩ってそんなタイプかな…。

避けられてるとして、どうして?

恋愛経験値の低い自分には全然判らない。


あの夏の日…先輩、すごく優しかった。嫌われたようには思わなかったんだけど…。

想ってるだけで良いのはホントなんだけど。
幸せなあの思い出が、ちょっと寂しくさせる。


卒業まであと少し。高校まで追いかけて行くつもりではいるんだけど…。
一年間は確実に会えない。

それまでに、話せるかな。


「先輩…。」

瞳を閉じ、恋する彼を想う。



次、会えたら勇気を出してお願いをしてみよう。

制服のボタンの、予約。






しかし、そんなチャンスが訪れないまま終業式を迎え、式でも飛影の姿を見つけることは出来ず冬休みに突入してしまい、年が明けようとしていた。




大晦日、蔵馬はぼたんと共に近くの神社に来ていた。もちろん新年と同時に初詣をするためである。

そして飛影の高校の合格をお願いするため。

蔵馬からこの誘いを受けたとき、始めは呆れて溜め息しか出なかったぼたんだったが、深夜のお出かけなんて大晦日しか出来ないし、初詣は自分も行きたいし、何より自分が行かないと言ったら一人でも行きそうな気がして、それはあまりに危ないと承諾することにした。

実際には二人でも危なすぎる…と双方の親に止められ、ぼたんの親が同行し、帰りは蔵馬を送る…ということで話が付いた。


新年まであと5分。
蔵馬とぼたんは両親の後ろに付いて境内へと向かう。

地元の小さな神社はちょっとしたお祭りのように賑わっており、皆が新年を待っていた。

参拝のためのをする列へと向かい、ぼたんの両親の後ろに二人で並ぶ。
手にはきちんとお賽銭を用意。
お願い事を思い返し、ぎゅっと握り締める。


「ごめんね、ぼたんちゃん、付き合わせちゃって。」
「良いって。私も来れて楽しいし。」

この日何度も聞かされた蔵馬の謝罪と感謝の言葉にぼたんは笑顔で返した。

でも、初詣に行きたいって言う理由には呆れるけどね…なんて付け加えて。




近くでカウントダウンが聞こえる。
…6,5,4,3,2,1、

口々に交わされる新年のお祝いと挨拶。
「ぼたんちゃん、おめでとう。今年もよろしくね」
「こっちこそ、よろしく」
可愛らしい女の子達の新年のご挨拶にぼたんの両親も笑顔だ。
そんな両親にも
「おじさん、おばさん、おめでとうございます。」と丁寧に頭を下げ挨拶をした。




ゆっくりと、少しずつ進む列。
冷えた手にはぁ~っと息を吹き掛け、その時を待つ。

まず目の前のぼたんの両親が参拝をし、その様子をぼたんと蔵馬はじっと見詰めた。
そして、そのお手本を思い出しつつ二人並んで参拝をする。



ぱんぱん!!


先輩が、高校に合格しますように。
卒業までに、もう一度、お話が出来ますように。






「ねえ蔵馬、おみくじ引く?」
参拝を終えてお守りや絵馬を購入する場所へ行き、再び順番を待つ。

「私は良いや。結果が悪いと凹むから。」
笑顔で答える蔵馬だが、どこか痛々しく、ぼたんの顔が曇る。
そんな自分に気を遣わせたくなくて、
「あ、じゃあ私あそこの焚き火のとこ行ってるね。寒くなっちゃった。」
と告げ、走り出そうとして…

心臓が、止まるかと思った。


振り返ると、そこには同じく初詣に来た幽助。
そして、飛影がいた。


「み、なみの…?」

「せん…ぱい…。」





*******

神社の境内の片隅、少し雪の残る場所に来た二人。


「ご…めんなさい…。」
鼻を啜りながらの謝罪。


久し振りに、それもいきなり飛影に会えた驚きと嬉しさで蔵馬はその場で泣き出してしまったのだ。
騒がしい場所とはいえ、誰もが笑顔のこの時に涙する美少女は周りの注目を浴びた。

慌てたぼたんと幽助は泣く蔵馬と呆然とする飛影を引っ張り、この場所へ連れてくると、
「え…と…じゃあ私らあそこのテントのトコにいるね」と、お酒や豚汁を振舞うために境内に設置されているテントを指差し、そそくさと離れていった。


残されたのは涙に濡れる蔵馬と、気まずい顔をする飛影。


とにかく公衆の面前で泣き出してしまったことを謝った。



「本当に久し振りに会えて…嬉しくて…。
また迷惑掛けちゃいましたね。」


泣きながらも笑って話す蔵馬に飛影の胸が痛む。

久し振りも何も、自分が避けていたのだから、会えなかったのは当然なのだ。

まさかこんなところで会うなんて…。

幽助に「受験生だし、願掛けに行こうぜ!」なんて誘われ、面倒臭いと思いながらも家に一人でいても気を抜くと蔵馬のことが頭に浮かんでしまうし…と来てみたら、浮かんでしまうどころか本物が目の前に現れた。

必死に忘れようとしたこの四ヶ月が無駄になってしまったと飛影は項垂れた。


だって、目の前で見たら、やっぱり蔵馬は綺麗で、自分を思って泣く姿に、戸惑いつつも嬉しいとさえ思ってしまった。

目の前で泣く女にこんな風に思ったことなんてなかったのに。



でも、そんな蔵馬に気の利いた言葉も掛けられず、顔すら見れない。
そんな自分に心底嫌気が差す。

黙る飛影に少しの不安を感じながらも、次はいつ会えるのか判らないという不安が勝ち、蔵馬が口を開く。
「あの…先輩…お勉強どうですか?捗ってます?」
「…あぁ、まあな…。」
飛影にとって勉強は蔵馬のことを考えないようにするためにしているもの。
捗らせなければならない。

そんなことなど知らない蔵馬は、自分に向けられた飛影の声に嬉しささえ込み上がる。
「そうですか…良かった…。
正直、先輩に会えなくて、ちょっとだけ…寂しかったんですけど、先輩の勉強が捗ったのなら報われます。」

本当は全然ちょとだけじゃないのだが、精一杯強がって見せる。
それは当然、飛影にも判って。

この四ヶ月間逃げ回っていたことを少し後悔した。
そしてその後悔を必死に頭から追い出す。

「先輩は合格祈願に来られたんですよね?」

「あぁ…。」

「じゃあここ、ご利益ありますよ。
私もさっき先輩の合格を祈願したんですけど、もう一つ、卒業までに先輩と話せますようにってお願いしたんです。そしたらすぐ会えたから。」


本当に、本当に嬉しそうに話す蔵馬。

せっかく追い出した後悔が戻ってきそうで、
「…そんなつまらんこと願ってどうする」
跳ね返すように言い放った。

途端に蔵馬の顔に差す陰り。
挫けそうな心をコートを握り締めることで耐えていた。
「…私には大事です…。私の合格祈願なんて必要ないかもしれませんが…。
それにどうしても卒業までに会いたかったんです。でも会いに行くことは出来ないから…神様に…。」



どうしても…?
何か俺に言いたいことが?

避けられていたことの理由か?
それとも、今度こそ付き合ってくれと…?

そのどちらも今の自分には答えられそうにないが…。

思案する飛影に、ずっと言いたかったお願いを告げる。
「先輩…卒業式の後、ボタンを頂けませんか?」

出てきたのは卒業生に対する、定番のお願い。
第2ボタンと言わないところがなんとも蔵馬らしくて、可愛くて…。


気を抜くと口元が緩みそうになる。


本当は嬉しいのに。

嬉しくて堪らないのに。


「そんなもの持っていたら、忘れるものも忘れられんだろう。」
口から出てくるのは蔵馬を突き放す言葉ばかり。


その言葉に翡翠の大きな瞳がさらに大きく見開かれる。
「先輩…私…忘れるつもりなんてありませんよ…?」

声が震えていた。

…泣いている…。
顔を見てなくても判った。


「先輩が卒業しても、好きでいますよ私。
ボタンがなくても。ただ、ほんの少しだけ、先輩を感じていたくて…。」

「忘れるさ。一年も会わずに居たら。忘れる。きっと。」

それはまるで、決意のような言い方。

「…先輩は…私に…忘れて…欲しい、ですか?」

「…。」


飛影の無言を肯定と取り、そして理解した。


「…あぁ…そっかぁ…。
それで私に会わないようにしてたんですね…。
私、やっぱり避けられてたんだ…。」


飛影は目を固く閉じた。
『やっぱり』
蔵馬は薄々感じていたのだろう、自分が避けられていることを。
でもそれを必死に考えないようにしていた。
その気持ちを思うと飛影の胸も張り裂けそうだった。

「あの夏、最後に会った日、先輩すごく優しかったから、嫌われてはいないって思ったんですけど…。
好きとか、嫌いとかじゃなくて、卒業するまでの間って決められてたんですね。
だから私が忘れられるようにって。」



蔵馬の言葉が胸に刺さる。
苦しい。


「でも、先輩…それなら、いっそ迷惑だって言ってしまったほうが、私を避けなくて済んで楽だったのに…。」


本当に、迷惑ではないんだ。言えるわけがない。
ただ俺が、好きなことが辛くて、忘れたくて、逃げただけ。

「高校に入ってまで想われるのは…迷惑ってことですよね…。」

違う。
それ以上言うな。俺は何も言えない。
言えないからお前は肯定だと…。


「…判りました…。約束、ですものね…。

今まで、私の気持ちに付き合って下さって、ありがとう…ございました…。」


最後は完全に涙声で。
これ以上は聞いていられなくて。
飛影はまた逃げるように走り出した。


「おい!飛影?!」
テントには行かず、そのまま神社を出て行く姿が見えて幽助が追いかける。
幽助と一緒にいたぼたんは慌てて蔵馬の方を見た。


境内の隅で一人しゃがみ込む姿。
泣いているのは一目瞭然で。
飛影に何を言われたのかも予想がついた。

本当なら一人にしてあげたいけど、こんなトコに置いて行けない。

ゆっくり近付いて肩に手を置き、優しく話しかける。
「蔵馬…もう寒いし、帰ろう?
あ!帰りに肉まんでも買ってく?身体冷えたもんね。」

何も聞かず話し掛けてくれるぼたんの優しさが沁みて、思わずぼたんに抱きついて泣いた。

声は、もう抑えられなかった。


「蔵馬…。」
優しく頭を撫で呼び掛ける。

「ぼ、たんちゃん…。先輩、も…忘れろって…。め、いわくって…。」

こんな風に泣く蔵馬を見るのは初めてだった。
出来ることなら今すぐ飛影を追いかけてぶん殴ってやりたい。
でも…

「ごめんね。せっかくの楽しい初詣だったのに…。」

こんなときにまで友達を気遣う優しい蔵馬がそんなことを望むわけもなく、その代わりにぎゅときつく抱き締めた。

「こんなときに私のこと気遣わなくていいよ。私に泣きついてくるのなんて初めてだから、ちょっと嬉しいよ。
でもさ、冷えるから、帰ろ?風邪引くよ。」

「ん…。ありがと…。」

無理はしてるけど笑ってお礼が言える自分にホッとする。

ぼたんが居てくれてよかった。
一人だったらきっと、ここから立ち上がる気力さえ湧かなかったに違いない。

親友に感謝して、少し心配そうにこちらを見ている彼女の両親の元へと急いだ。




*********

春の気配が見えるものの、まだまだ冷える3月初め、飛影の卒業式が行われた。

あれからもちろん、飛影が裏庭の花壇に来ることは無かったが、蔵馬を避けることも無くなった。
もう自分を見ても話しかけてこない事が判っていたからだ。
残りの学校生活は普通に玄関から入り、普通に過ごした。

何度か蔵馬とすれ違ったが、もう挨拶をしてくることも無くなった。

それを、寂しいとも辛いとも思わないようにした。
自分が突き放したのだから。

あれだけ声を掛けてきていた蔵馬が、飛影と無言で通り過ぎている様子は、それを見た生徒からあっという間に広がり、飛影が南野を振った…と噂になった。
その真意を聞いてくる連中は何人もいたが、飛影は無言を突き通した。
そして、振られた蔵馬に優しくして振り向かせようとしてる輩がいる…なんて話もちらほら聞いたが、飛影は考えないように努めた。

あれだけ蔵馬を傷付けたのだ。

いまさら蔵馬に誰が近付こうが、それをどうこう思って良いはずが無い。



大丈夫だ。
きっと。忘れられる。
あいつも。
俺なんかよりずっといい奴が現れたら、きっと。









「卒業生、退場!!!」

会場に別れの音楽が流れ、 拍手をする在校生の花道を少し恥ずかしそうに卒業生は次々と去っていく。


飛影は少し俯き、瞳を伏せて花道へと向かった。

視界の端に入り込む在校生。

蔵馬の席のある二年生の場所はもうすぐ。


これで…終わる。もうすぐだ。
もう、あいつに会うこともない。

…最後にもう一目、あの翡翠色の瞳を…。



そんな欲求に勝てなくて、思わず目線を前に向けてしまった。

それは真っ先に視界に入ってきた。
真っ直ぐに、強く美しく飛影を射止める翡翠の輝き。


飛影の姿を自分の瞳に、しっかりと焼き付けるように。
あまりの強い視線に飛影も目を逸らせることが出来ず蔵馬を見詰める。

それは初めて出会った日の事を思い出させた。
あの日も、自分はこんなふうに目を逸らせなくて…。


この光に自分は惹かれ、そして逃げた。



徐々に近付く距離。
一歩一歩進むごとに近付く別れの時。
そして次第に大きく見えてくる蔵馬の姿。

必死に涙を堪えているのが判った。
唇をキュッと噛み締め、肩に力を入れ全身で耐えている。


その様子を自分への戒めのように胸に焼き付け、飛影は蔵馬の横を通り過ぎた。



会場から出て行く飛影の後ろ姿を、蔵馬は後ろを振り返り飛影の背中が消えるまで見詰め続けた。

飛影の姿が消えると、蔵馬は下を向き、その瞳からいくつもの雫を落とした。髪で隠して見えないようにして。

その蔵馬の手は隣にいるぼたんの手をしっかり握り締めている。
声を上げて泣いたりしないように、必死に耐えて震えているその白い手を、ぼたんはきつく握り締めた。








式の後、かったるい担任の挨拶も終わり、教室では、別れを惜しんで泣く女の子、写真を取り合うもの、それぞれが思い思いの中学最後の日を過ごしていた。

「飛影、今日どうする?うち寄ってくか?それともゲーセン行くか?」
感傷的なことには無縁のこの二人はあっけらかんとしたもので、クラスの様子を少し冷めた目で見ていた。
「あぁ、じゃあ今日はお前の家に…」と飛影が言いかけ、何かに気付き止まる。
幽助に向かって顎で教室の入り口を差し、
「…と、思ったが、止めておく。」と言い変えた。

幽助が振り向くと、そこには螢子が何か言いたそうにこちらを見ていた。
「あー…と…。」
気まずそうにする幽助に
「気にせず行け。」と添えて、一人教室を出た。



少し恥ずかしそうに笑い合う二人の様子をちらりと眺め、階段へと向かう。

自分も幽助の様に単純なら、あいつを悲しませることもなかったのだろうか。

幽助をほんの少し羨み、そして出たのは深い溜め息。

この期に及んでまだ蔵馬のことを考えている自分に呆れてしまう。




玄関に着き、靴を履き、上履きを…捨てようとしたが近くにゴミ箱が無いので鞄に入れる。
ついでに胸元に着いていたリボンも。


靴を履いてゆっくりと校門に向かっていく。



退屈だった学校生活。
それが蔵馬によって大きく変えられた。
飛影にとって、それは確かに初恋だった。
その初恋は、甘くて、そして酷く苦いものだったけれど。




まぁ、悪くなかった…。



「先輩!!!」

突如、背後から掛けられた、声。


振り返ると、そこには息を切らして立つ、蔵馬の姿。
赤い薔薇の花束を両手で大切そうに抱えていた。

「あの、これ…!!」
思い詰めた面持ちで花束を差し出す蔵馬。

その様子飛影はただ黙って見詰めた。

「約束、破ってごめんなさい。
でもこれだけ、受け取ってもらえませんか?
あの花壇に初めて植えたバラです。卒業する先輩に渡そうと思って、ずっと…大事に育ててきたから…。」
震える蔵馬の声から必死さが伝わる。



一体どれだけ前から別れを覚悟して俺を想ってきたんだこいつは。

「花だから…枯れたら捨ててしまうものだから…後腐れも無いし…。」
よほど受け取って欲しいのか、珍しくマイナスな言い方をする蔵馬が何だか可笑しい。

「でも…ずっと…私と先輩を見てきたバラだから…」

また泣く…。
どうしてお前はそんなにも俺を…。
俺なんかを…。

どうしてこいつの泣き顔は、こんなにも綺麗なんだ。



「私の…先輩への…想いだから…。
どうか、お願いします…。」

ゆっくりと、手を出し蔵馬から花を受け取る飛影。
蔵馬の手は微かに震え、ここに来るのにどれだけの勇気が要ったのか理解できた。

そんな蔵馬の勇気に誘われるように、飛影の口元が緩む。
「俺にバラなんて似合うわけ無いだろ…。」

花束を見詰めポツリと呟くその声はいつもの素っ気ない、けれど優しい、蔵馬の大好きな声で…。

「そんなこと無いです。先輩の瞳と同じ色…。私、一番…好きです。」
自然とその言葉を口にしていた。


好きです。


まだ、好きです。


そう、伝えていた。




…お前は本当に強い女だな。
俺にも…そんな強さがあれば…。

「ほら。」

わざとらしい溜め息と共に、徐に拳を突き出した飛影。
「貰いっぱなしは性に合わん。」
「え…?」
蔵馬の掌にポトンと落とされたのは、飛影の制服の第二ボタン。


途端に蔵馬の大きな瞳から溢れるいくつもの雫。

「先輩…私、忘れなくても良いんですか?
まだ、好きでいても…?」
ボタンをぎゅっと握り締め、濡れた瞳で飛影を見詰め、問い掛ける。


その様に飛影は再び溜め息を吐いた。
今度は小さく。

何かを諦めたように。
そして…


「…好きにしろ」
いつか言った言葉を返した。


すると、予想通りの綺麗な笑顔。





あぁそうだな…。
諦めよう、忘れなくて良い。

俺も、忘れることを、諦めてみよう。

どこまで持つか判らないけど、ただお前を想ってみよう。お前のように。


それに耐えられたら、きっと、


そのときのお前を受け止めれる強さくらいは、得られてると思うから。



「南野…。」

「はい…?」

「そんなに忘れないって言うなら、一年経ったら俺に会いに来い。そしたら、付き合ってやっても良いぞ。」

「!?」

今はまだ、こんな言い方しか出来ないけど…。

本当に、俺の前に現れたら、その時は覚悟を決めてお前と向き合おう。


そして、今度こそ伝えよう。


俺もずっと、好きだったと。



「じゃあな…。」

短い別れの言葉と柔かな眼差しを餞別に、飛影は校門へと歩き出す。

「あ…先輩っ…。」
飛影は振り返らないけど、初めて言葉を交わしたあの時の様に、その背中すら優しくて…。


「先輩!私…ずっとずっと、好きでいますからね!!」
精一杯の想いを告げた。


「でかい声で喚くな。相変わらずおかしな女だな。」

少し振り返り、いつか言った言葉をまた投げ掛ける。ほんの少し眉間にシワを寄せ、照れ臭そうに。
そして今度こそ振り返らずに門へと向かった。

校門を抜け、去っていく後ろ姿を蔵馬はしっかり瞳に焼き付けた。
鮮明に残せるように、今度は涙を我慢して。


飛影の姿が消えると、抑えていた涙が再び溢れ、蔵馬の頬を濡らす。

その涙の先、掌には飛影の金ボタン。
その感触を確かめるように強く握り締めた。



少しだけ寂しいど…大丈夫…。

これからも、あの思い出の裏庭で、あの人を想っていよう。
バラと、このボタンと一緒に…
ずっとずっと。






そして、誓いのキスのように優しくボタンに口付けた。






end




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



お、お疲れさまです~( ̄▽ ̄;)

本当に長かったですが…。
これで蔵馬ちゃんの中学生編は終わりでございます(*^-^*)



やたらと長い拙すぎるお話をここまで読んでくださって、本当に有難うございました。


次は女の子蔵馬ちゃん『高校生編』でございます。
相も変わらずお子ちゃまなお話ですが、んもうラブラブになっていきますので、
かーーー!何やってんだよお前らは!なんて突っ込みながら読んで頂けたら幸いです~(*´∀`*)




ここまで読んで頂きまして本当に有難うございました~(*´∀`*)





拍手有難うございます~!!
幸せ一杯です(*´∀`*)
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またまたコメント失礼します!

こんばんは!またまた失礼します!

えっと、過去記事を地道に地道に読んでいます!
本当に絵がお上手で…パソコンの前で悶絶する毎日…
過去のからきちんと読みたいので、
まだ最近の記事は読んでいません…我慢しています!!!!

今日、飛影と蔵間のあのデュエット曲、
Wind wind を久しぶりに聞きまして、
なんとなく「あ、まいさんもコレご存知かしら…ワクワク」なんて思っていました(笑)

いつも変なコメントですみません…(汗)

また遊びに来ますね!!!!
最後になりましたが、今、物凄く私の中で「風祭陣くん」が熱いです、カッコイイ☆

Re: 荊さま

あぁ何てこと…過去から順番に…?
最近のは我慢…?

何て光栄な…!!
本当に有難うございます~(*´∀`*)
めちゃめちゃ嬉しいです!!


WILD WIND、もちろんですよ!!
このCDが発売されたときどれだけ悶えたことか…!!
だって他の皆は男女のカップルの中、飛影と蔵馬がデュエットですもん!
もう、世間様公認のカップルじゃーーん!なんて歓喜したものです。
あの歌は名曲ですね♪

あら、そして荊さま!
風祭 陣くんがお気に入りと?!
あんなちらっと出しただけの陣くんに食い付いて頂けて本当に嬉しいです!
私の脳はほぼ飛影と蔵馬で占めておりまして(^_^;)、他のキャラは描くのは本当に苦手なので、ドキドキしながら載せました( ̄▽ ̄;)

でも陣と凍矢のコンビは好きなので、また描けたら描きたいと思います♪

その時はまた、見てやってくださいませ(*^-^*)


コメントを有難うございました~(*´∀`*)


ここにもコメントして、申し訳ありません…でも…泣きました( ; ; )

Re: かささま♡

いえいえ!コメントはいつでもどこでもお待ちしておりますしとても嬉しいです♡♡

わ✨女の子蔵馬ちゃんのお話を...!
ありがとうございます〜(。>ω<。)この2人の話は再燃して初めて書いたものなので私自身とても思い入れがありまして♡
なので本当に嬉しいです♡

パラレルな世界でしか書けないピュアピュアな飛蔵の2人をこれからもお届け出来るよう頑張ります〜♡
プロフィール

舞彩

Author:舞彩
名前/舞彩(マイ)
生年月日/19××年2月3日
出身地/一番人口の少ない県
趣味/飛蔵(蔵飛も少々)のお絵描きやお話し作り。カラオケ。冬限定で編み物。ダイエット(悲しすぎる趣味)
好きなモノ/飛影と蔵馬!!
チョコレート。和菓子。メロンパン。カフェオレ。紅茶。通販雑誌(見るだけってやつ)
嫌いなモノ/カメムシ(殺虫剤で死なない恐ろしい虫!)、カエル、シイタケ、グリーンピース
幽白歴/約22年。昔と変わらず(それ以上?)今もこの作品、そして飛影と蔵馬を愛しています!

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