小さな恋の物語・第一章 act.4 想い、想われ。

蔵馬ちゃんと飛影先輩の甘酸っぱいお話しの続きです。

まただらだらと長いですが最後まで読んで頂けたら嬉しいです(*^-^*)

それでは、追記よりどうぞ~(^∇^)






act.4 想い、想われ。



蔵馬と別れ教室へと向かいながら飛影は先程の出来事を思い返していた。


我ながらどうかしている。
あんな約束をして…しかもそれを律儀に守って…。本当に来るかどうかの保障も無いのに。
いや、あいつなら来ると思ったが…。
それにしてもあの顔…心底嬉しそうな顔をしていたな。
泣き出すんじゃないかと思うほどに。
なんであんな…。


と、そこまで考えたところで教室に着いたので、とりあえず蔵馬のことを考えるのは終了とし、自分の席へと向かった。

遅刻をせずに時間通りに学校に来たのなんて、どれくらいぶりだろう。
教室に入るとクラスの連中がざわついたくらいだから相当だろう。


何やら視線を感じ居心地の悪くなった飛影は、席で一息吐くこともないまま、何時も幽助や桑原と授業をサボるときに使う屋上へと上がった。




本来立ち入り禁止の屋上は普段誰も来ない。
鍵が掛かってはいたが、手先の器用な飛影はこの程度の鍵は針金一本で開けられた。故に何時もポケットに針金を入れており、自由に入っていたのだ。
もちろんこんなことが出来るのは飛影だけなので幽助たちは飛影が来るまでは屋上に入れない。
いつも通り一番乗りの屋上に足を入れる。

いつもより早い時間帯の屋上は、かなり涼しく感じた。


でも今日も良い天気で風も心地良い。
今日は早起きしたから少し眠たいし、幽助達が来るまでしばらくここで寝ていよう。


飛影は屋上のど真ん中、何も日差しを遮るものが無い場所へ来るとごろんと寝そべった。


しばらく寝よう…そう思ったのに頭の中には蔵馬のことばかり出てきて一向に寝付けなかった。
「ちっ…。」
思わず舌打ちをして横に寝返る。

だがそうしてみたところで頭から離れるわけでもなく、諦めて再び蔵馬の事を呼び起こす。


あいつは何だってあんな事を言い出したんだ?
なんで俺に関わろうとするんだろう。
いや…まぁ、さすがに判るな。
たぶん俺の事が…。


恋愛感情…ましてや女の考えてる事なんてこれっぽっちも判らない飛影だったが、さすがにあれだけストレートに感情を出されたら嫌でも判る。
ただ、判らないのは何故自分なのか…ということだった。


自分のような素行の悪い人間に一時憧れる、女子特有のものだろうか…。


実際、中学生にしてはやたら落ち着いた雰囲気とクールな性格で飛影に憧れている女子は少なくない。
二、三人こっぴどく振ってからは噂が立ち、直接告白する勇気のあるものはいなくなったが、それでも遠巻きに飛影を見詰める者は後を絶たなかった。

もちろん、当の本人はそんな事はどうでもよく、むしろ鬱陶しいとさえ思っていた。

なのに…蔵馬に関してはあまりそう思わない。
そのことに自分自身が一番驚いていた。


いままでにないタイプだからだろうか…。


その答えに多少強引に納得する。



そうだ。あんなくだらない事を気にして謝ってきたり、挨拶がしたいとかいってきたり、園芸部なんてものを創ったり…あんな変な女見た事もない。
だから珍しいだけだ。
あいつだって、一時的なものだ。
すぐに変わる。
誰だって自分に優しくしてくる男がいいに決まってる。あいつならそんな男、これからいくらでも言い寄るだろう。
それまでの間だ。
それまでの間、時々相手をしてやるくらい良いか…。


そこまで考え、飛影は瞳を閉じ、今度こそ眠りに付いた。
自分らしくない甘い考えに少し呆れながらも。








****************
飛影と挨拶を交わした日から、約一ヶ月が経った。



蔵馬は昼食を終えると何時ものように裏庭へと向かった。

太陽は徐々に高くなり、日々感じる夏の気配。
昼間の晴れた日は冬の制服だともう暑くて、衣替えが待ち遠しい。
それでも時折吹く風はまだ少し冷たくて…。

その心地良い風を頬に感じ、蔵馬は顔を綻ばせながら裏庭へと進む。

誰もいない校舎裏。

何時もと変わらない、時が止まったように静かな場所。


少し古いベンチと、小さな薔薇の苗木たちが蔵馬を出迎えた。

蔵馬は花壇の前に来ると薔薇をいとおしそうに見詰め、腰を下ろした。
まだ小さな苗木は花を付けてもいないし、広い花壇はまだスペースが残っていて少しの殺風景さは否めないが、飛影と過ごした大切な場所を自分の手で素敵な庭にしていける…それだけで満足だった。


あれから飛影は一度も顔を見せなかったが、蔵馬はあまり気にしないようにしていた。
たまに来るだけだと言っていたし、何より自分が好きで勝手に来ているのに期待するのも何か違う気がした。

何よりここに来てあの日の出来事を思い出すだけで幸せな気持ちになれる。
あの日飛影と話した会話の一つ一つ、飛影の顔、帰り際の約束…。
そして次の日果たしてくれたその約束。

一ヶ月経っても思い出すだけで胸が一杯になる。
苦しくなるほどに。


それに…

いつかは来てくれる気がした。そのいつかのためにもここは念入りに手入れしておきたかったのだ。


あれ?これって…やっぱり勝手に期待してるのかな?

そんなことを考えると何だか可笑しくなり自然と笑みがこぼれた、

その時…。

「何一人でニヤニヤ笑ってやがる」


突然背後から声がして蔵馬の体がビクッと跳ねた。
振り向かなくても誰かはすぐに判った。今しがたまで本人を思い浮かべていたのだから。

でも…一人で笑ってるところを見られた。しかもニヤニヤしてた?

慌てて立ち上がり飛影の方を向く。

「す…すみません!別に私変なこと考えていたわけじゃ…!!」
…ついパニくっておかしな事を口走ってしまった。
飛影が少し驚いた顔をしている。

「いえ…あの…。」
次の言葉が出てこず詰まっていると
「お前はとりあえず謝るんだな」とからかわれたように言われ、顔が熱くなった。
「あ…。」
またやってしまった…。
困惑する蔵馬に飛影は
「変なこと考えていたのか?」とさらにからかった。
「ち…違います!!!花のお世話を楽しんでいたんです!!」
顔を真っ赤にして首をブンブン振り否定する蔵馬の様子がよほど可笑しかったのか、飛影は口元を押さえ肩を震わせて笑い、そのままベンチに腰掛けた。

からかわれた恥ずかしさで顔の火照りは引かないまま蔵馬は飛影をじっと見詰める。

来てくれた…。

嬉しさで目頭が熱くなる。


飛影はベンチの背にもたれ掛かると空を仰いで気持ちよさそうに瞳を閉じた。

…綺麗…。

その瞳を閉じた横顔に思わず見惚れる。


暫しの間無言で見入っていると、その視線に気付いた飛影が居心地悪そうにこちらを向き口を開いた。
「俺の顔に何か付いてるか?」
その言葉に我に返った蔵馬はまたもあたふたしながら答える。
「いえ…!あのっ…先輩の横顔が…とても綺麗だったのでつい…。」


「はぁ?!」
思わず出た素っ頓狂な声に飛影自身も驚いたようだった。
「あ…すみません…男の人が綺麗って言われても嬉しくないですよね。あの、今のは忘れてください。」
「……。」
今度は飛影が黙ってしまった。
自分のせいで困惑させてしまったと思った蔵馬は、どうにか話題を変えようと必死で言葉を探す。
「あ…あの先輩…。お久しぶりですね。」
出てきたのはなんとも平凡な挨拶。
普段はわりと頭の回転は良いほうなのに、肝心なときに役に立たない。

「あ、あぁ…。」
短い返事だったが、それでも返してくれたことに幾分落ち着き、「またここで会えて嬉しいです」と伝えることが出来た。





***************
綺麗?!綺麗ってなんだ?
産まれてこの方、そんな言葉が自分に向けて発せられたことなど一度も無い。
こいつは一体何を言い出すんだ。

飛影の頭の中は、らしくもなく軽いパニックだった。

「綺麗って言われても嬉しくないですよね」

嬉しい嬉しくない以前の問題だ。
綺麗っていうのはお前みたいな奴に使う言葉だろう。
あまりのことにうっかりそう言いかけた。



やっぱり来るんじゃなかった。

飛影はこの場所に来たことを早くも後悔してきた。


この一ヶ月の間、何度もここに足を運ぼうとした飛影だったが、なかなか実行に移す事が出来ずにいた。ここにきたら絶対蔵馬がいるだろうと思ったからだ。
自惚れでもなんでもない、いるという確信があった。
元々気に入っている場所だったし、天気の良い日は行きたいのは山々だったのだが、蔵馬がいるのかと思うと気が乗らなかった。
会いたくない…というわけでもない。
ただ、自分を好いているであろう人間のところに行く…。という事がすこし気が重く、なかなか実行できなかっただけだ。

だが、昨日の夕方の帰り道で、幽助に言われた事が、飛影の重たい腰を上げさせた。



「飛影よ~、お前が時々行ってるっつってた裏庭、今行ってねぇんか?」
『裏庭』という言葉を他人から聞き、一瞬ギクリとした飛影だったが、すぐに平静を取り戻し、その質問の経緯を聞く。
「何故そんなことを聞く。」
「いや、今日よ、トイレで大してるときによ…。」
と、余計な情報を冒頭に幽助は続けた。


クラスの連中が話してたんだよ。最近昼休憩になると、一年の南野って子が裏庭に行ってるらしいって。あそこを飛影が時々寝床にしてんの結構知られてっから、もしかして会ってんじゃねぇか…なんて噂してたけど、そしたら別の奴が一人でいる…。
みたいなこと言っててよ。今度見に行ってみようか…なんつってたぜ。
で、実際はどうなんだ?だいぶ前に来てたあの子だろ?行ってんなら会ってんの?

ニヤニヤしながら聞いてくる幽助に、どうにかポーカーフェイスを保ちつつ「貴様に関係ないだろ」とだけ答えた。
その後も教えろと騒ぐ幽助に無視を決め込み、終始黙秘を貫いた飛影だったが心中穏やかではない。

トイレでの男子生徒の「今度見に行ってみようか」の言葉が頭から離れない。



そうだ、あいつはきっと天気の良い日は毎日行ってる。あれだけの有名人だ。そんな情報すぐに知れ渡る。
あいつに会いに裏庭へ行く輩もきっと増えるだろう。
そしたら…。
あいつが言っていた「お気に入りの場所」が台無しになる。

それに…。
俺に笑いかけるように他の奴にもあの笑顔を見せるんだろうか…。あの場所で…。


そんなことを考えていたら、来てしまったのだ。
この裏庭に。
このことが幽助に判ったら散々からかわれる、と判ってても。




人気の無い校舎裏の道を進み、角を曲がると花壇の前にしゃがみ込む蔵馬の姿が見えた。…どうやらまだ誰も来てないようでとりあえずホッとした。
少しの間遠めで様子を伺っていると、何がそんなに楽しいのかニコニコしながら植えたばかりであろうバラの脇に生えている雑草を抜いている。

仕舞いにはクスクス笑い出す始末だ。半ば呆れながらもその笑顔に惹きつけられるように蔵馬に近付いて行き声をかけた。
照れ臭さを隠すように、わざと、からかうように
「何一人でニヤニヤ笑ってやがる」…と。
…返ってきた言葉は思っていたより面白かった。




***************
も~恥ずかしいなぁ…。
私先輩にちっとも良いとこ見せられない。

でも…嬉しいな…来てくれた…。


多少凹みつつも今この裏庭に飛影がいるという事実に自然と笑顔になる。
蔵馬は再びしゃがみ込むと、飛影にとっては『何が楽しいのか判らない』草むしりを再開した。
…といってもほぼ毎日来てるため大した雑草などもう生えてはいないのだが、何かしていないと落ち着かないので、ちょっとかわいそうにも思えるほど小さな生えたばかりのような草まで引っこ抜く。


「…空いてるところには何を植えるんだ?」
突然の飛影の質問。
だが少し落ち着いたのか、先程の失態で吹っ切れたのか、わりと落ち着いて答えることができた。
「あ、ここですか?ここにもバラを植えるつもりです。いろんな種類のバラが咲いたら楽しいかなって…。
でも思ったよりスペースが広くて全部は埋めれなくって…来月のお小遣いまで待つか貯金を下ろすか考え中なんです。」
蔵馬の発言に飛影が目をぱちくりさせる。
「おま…ここの花、自腹で買ったのか?」
信じられないといった様子だった。
無理も無い。学校の活動である部活に自分の小遣いを使い切る奴はそうはいない。

でも蔵馬は「はい。今年から創った部なので部費も少なくて…。
でも自分でお金出してするんなら、ここの花壇は好きにして良いって言ってもらえたので、たくさんのバラを植えれるから楽しみです。」…と本当に嬉しそうに話す。

本気で呆れてはいたが、本人が苦ではないのなら良いのだろうと納得し、
「そんなに花が好きなら、お前の家も花だらけなのか?」と聞いてみた。
「あ、私の家、花屋なんです。」

飛影はますます納得したようだった。



しばらくそんな他愛のない会話をしていると、
「お前、いつまでそこにいるんだ?」
と飛影が言い出した。

「え…?」
か…帰って欲しいって事…かな…。

蔵馬の瞳に困惑の色が差す。それに飛影が感付いたのか、「そうじゃなくて」と続け、
「もう草なんて無いだろう。そんな所で突っ立ってられる方が気になる。まだ居るんなら座れ。」
いつもの命令口調で、でも少し優しく、蔵馬に座るよう促してきた。



言われたとおり(でも思いっ切り隅っこに)飛影の座るベンチに腰掛けた蔵馬だったが、緊張で何も話せずにいた。

ど…どうしよう…当たり前だけど先輩が近い…。心臓が飛び出そう!!
話題が思いつかない!早くしないと休憩時間終わっちゃう!!


一人倦ねいている蔵馬に気付いて、飛影がポツリと喋り出した。
「どうせなら食えるもん植えたらどうだ?」
「え…?」
目線は前を向いたまま、横からの蔵馬の視線を感じて、
「バラも良いが、どうせなら食えるもんも育てたらどうだ」
もう一度言う。

飛影から話題を振ってくれたことで気が楽になり
「え…っとトマトとか茄子とか?」
とりあえず割と簡単でこれからでも収穫できそうなものを挙げてみた。
蔵馬の答えに少しこちらを向いた飛影の目が優しくて…心がじんわり温かくなる。

「他は…ピーマンとか?」
「ピーマンは好かん」
間髪入れず返した飛影が何だか可愛くて…思わず笑いが込み上げた。
楽しい会話に心が弾む。

「じゃあ他には何が良いですか?」
そう、嬉しそうに問い掛ける蔵馬に飛影は暫し考え込むと…
「スイカとメロン」
真面目な顔で 答えた。

「え…えっと…果物は私、育てたことなくて…甘く出来るかな…。スイカ育てるなら畑作らないと…間に合わなかったらどうしよう…。そしたらごめんなさい!」

それはそれは真剣に悩む蔵馬にとうとう飛影が吹き出した。
「ク…ハハッ…」

「え?」

「冗談だ。お前、裏庭を農園にでもするつもりなのか?」


わ…飛影先輩が…すごく笑って…。


初めて見る飛影の楽しそうな笑顔…。
心臓が痛いくらい高鳴る。


「自分の好きなものを植えろ。本気にするなよ。」
尚も笑いながら喋る飛影に蔵馬は釘付けだった。

その自分を凝視する蔵馬に飛影が気付く。

「南野?どうした?」

……!!!!!
「先輩…私の名前…初めて呼んでくれましたね…。」

「え?そ…うだったか?」



駄目だ。
頬が熱い…。
鼓動が死にそうなほど激しくて痛い。
胸が…苦しい…。



自分に向けられた飛影の笑顔と自分を呼ぶ声…それが嬉しくて、苦しくて。

…想いが溢れて…

思わず言ってしまった。




「先輩が、好きです。」






第一章 終わり

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



お疲れ様でした~(笑)

長かったですね…;
本当はここまでが一つの『第一章』としての話しでして…。
あまりに長いので無理矢理四つに分けたもので、変なところで区切った感じになった部分もあって読みにくかったと思います(^_^;)
今回の初めの飛影の屋上のエピソードなんてホントに半端ですよね;
削ろうかとも思ったのですが、飛影くんが蔵馬ちゃんの気持ちを理解する部分なのでしたくなくて…。
でも分けるには短いし、上手く他に織り込むことも出来ず…。
すみません(^_^;)

こんな読みにくい小説をここまで読んで下さって本当に有難うございます!!

次は第二章へと続きます。
相変わらずの内容ですが、載せた際にはまたご覧いただけたら幸せです。




拍手有難うございます~(*´∀`*)
次も頑張ります!!
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プロフィール

舞彩

Author:舞彩
名前/舞彩(マイ)
生年月日/19××年2月3日
出身地/一番人口の少ない県
趣味/飛蔵(蔵飛も少々)のお絵描きやお話し作り。カラオケ。冬限定で編み物。ダイエット(悲しすぎる趣味)
好きなモノ/飛影と蔵馬!!
チョコレート。和菓子。メロンパン。カフェオレ。紅茶。通販雑誌(見るだけってやつ)
嫌いなモノ/カメムシ(殺虫剤で死なない恐ろしい虫!)、カエル、シイタケ、グリーンピース
幽白歴/約22年。昔と変わらず(それ以上?)今もこの作品、そして飛影と蔵馬を愛しています!

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