鉛筆&駄文白書(コンビニ愛/声と名前と溢れる想い①)

「よぉ蔵馬!待ったか?」

平日の午後3時過ぎ、学生の溜まり場と化したファミレスにやって来た幽助。
一足早く来ていた蔵馬に明るく声を掛ける。
「ううん。今来たとこだよ。」
お決まりの台詞を口にしながら幽助にメニューを渡す。

サンキュ~陣と凍矢はもう少ししたら来ると思うからよ。鈴木も。何か頼んでようぜ。」

「?何で一緒に来なかったんだ?」
自分以外は全員同じ高校だ。
一緒に来れば時間も無駄にならないのに。
「いや~俺は飛影を撒くのに必死だったからよ!」
「……」
ウエイトレスにドリンクバーとフライドポテトを注文しながら事も無げに話す。
『飛影』という名前に一瞬ドキッとした蔵馬だったが、すぐに意味を理解した。
「え…幽助…また補習サボったの?;」

「おう!今日は見事に撒いてきてやったぜ!!今ごろ飛影の奴カッカしてるぜ~」

蔵馬の驚きをよそに無邪気に笑いながら話す幽助。
彼はどうしてこうも教師(それも特に飛影)を怒らせることを嬉しそうに話すのか、蔵馬にはよく判らない。
何だかんだ言って飛影を気に入っての事ではあるのだろうが…。

…出来ることなら自分が飛影先生の補習を受けたい…。
そう思わずにはいられない蔵馬であった。



それぞれ好きな飲み物を取りに行き、ポテトを食べながら残りのメンバーを待つ。
と、そこに…。

Pi Pi Pi Pi…

幽助のスマホから着信音が鳴る。
ディスプレイには 鈴木 の文字。
「お!鈴木だ!!アイツも撒けたようだな♪」

ピッ

「お~!やっと撒いたのかお前!おせーよ!今蔵馬といつものファミレスにいっからよ、早く来いよ!!」

テンション高めに話す幽助だったが…電話の向こうから聞こえてきたのは…

『ほぉ~…ファミレスにいやがるのか、貴様…。余裕だな…。

いつもよりさらに低い声で今にもキレそうになっている飛影の声だった。

「…ひ…飛影!!?何で?」
予想もしなかった声に狼狽える幽助。
そんな幽助を見ても蔵馬は
(いいなぁ飛影先生と電話でお喋り…。)
と、呑気に羨ましがるだけで…。
カルピスソーダを飲みながら電話が終わるのを静かに待っている。


『鈴木を捕まえるのくらい容易いことだ。貴様は逃げ足が早くなったな。この俺を撒くとは…。』

「いやぁ~それほどでも♪」
もう落ち着いてすっとんきょうな事を言うところはさすがである。

『誉めてない。お前…本気で留年したいのか?』

心底呆れている様子の飛影だが、彼はこれでも本気で幽助を心配しているのだ。
「いや、そういうわけじゃ…。留年なんてしたら、お袋に殺される…;」

『じゃあ、今すぐ戻ってこい!!お前が今躓いてる所は大事な基礎のところだ。きちんと理解しないと後が大変になるぞ!!』

「うう…;」

幽助だっていつも補習をサボっているわけではない。飛影を怒らせると後が怖いことは理解している。何も予定が無く、気も向けば素直に参加することも稀にだが、あるのだ。

だが、今日は…。
彼にとってチャンスの日。逃すわけにいかなかった。

この場をどう切り抜けようかと必死に足りない頭で考える幽助に、蔵馬がテーブル脇にある紙ナプキンに書いたメモを見せる。


『補習は受けた方が良いよ。留年なんてしたら温子さんも悲しむから。』

何とも蔵馬らしい言葉である。
だが、心配そうにする蔵馬の顔を見て幽助はニヤリと笑った。
「?;」
…嫌な予感しかしない。

「ちゃんとべんきょーはするって!今日はさ、蔵馬に教えてもらう予定だったんだよ。バイト休みだから。」

「?!;」
なになに?勝手に俺の名前だして!
そんなことで飛影先生が納得するわけないじゃん!!

「蔵馬の頭の良さ知ってんだろ?コイツ教えるのも超うめーんだよ!昔っから!今日はファミレスで勉強会なの!ちゃんと理解するまで教えてもらうからよ。ガッコだと落ち着かねーんだよ俺!」


…嘘ばっか…。これからカラオケ行くって言ってたくせに…。たぶん女の子呼んでるんだな。嫌だなぁ;しかしよくもまぁ平気でこれだけの事を…。


ペラペラと嘘をつく幽助に蔵馬は思わず感心してしまう。
でもこれで飛影が納得するとは思えない。
「ホントだって!!勉強会!!」

…案の定信用されてないようだ。

やれやれ…今日はもうお開きかもな。
この分だと陣や凍矢だってすでに飛影先生が手を回していて来ないかもしれない。

そんなことを思っていると…

「じゃあ、蔵馬に代わっからきいてみろよ!コイツは教師に嘘なんて吐かねーから!」

「「?!」」



「なっ…ちょっ幽助?

なんて事を言うのだ。俺はもうコイツを殴っても良いのではないだろうか。
蔵馬は本気でそう思った。


飛影先生と電話で話す?
無理だ!!
確かに電話で話している幽助を羨ましいと思った。
だがそれは『気軽に話せる間柄』を羨んだのであって、今すぐに話したいと思ったのではないのだ。

まして自分に教師を、それも飛影先生を騙すことなんて…とてもじゃないが出来そうにもない。

だが幽助はそんな蔵馬の事などお構いなしに、何やら必死にスマホを渡そうとしてくる。

「ほら!蔵馬!」
「ちょ…困るよ!!何を言ってんの?俺は関係ないだろ!補習行けよ!もう!!


声が聞こえないように通話口を押さえつつ小声で話す幽助と蔵馬。
どちらも必死である。



「頼む!飛影の奴を説得させてくれ!お前の話術で!得意だろ?!」
「得…っ…そんな訳無いだろ!無理だよ!!」
「お前なら大丈夫だ!今日第一女子の子呼んでんだよ!お前で釣って可愛い子を五人も!大チャーンス☆頼む!」
「なっ…;また勝手な事…!!」


若者や主婦が集まる午後のファミレスで激しく、だが小声で口論する二人。隣の席に座る若いママたちが不思議そうに眺めている。

そして学校では…

「おい!幽助!!!電話に出ろ!!代わらなくて良い!;判った!信じるぞ!だから代わるなーーー!!」

同じく、職員室で他の教師たちや正座中の鈴木から怪訝な視線を浴びせられながら怒鳴り散らす飛影の姿が。
彼もまた電話で蔵馬と話すなんてとんでもなかった。
コンビニでしか話したことの無い相手と…まして密かに想っている相手の声を耳元で聞くなど想像も出来ない。

「幽助ーーーー!!;」

飛影の声が空しく響いていた。




「蔵馬~頼むって!飛影を説得してくんねーと鈴木も来れねーし、人数が揃わねーだろ!」
「だから、無理だって!もう!」
「そこを何とか!!ホラッ!!」



尚も説得を続ける幽助。
とうとう強引にスマホを渡してしまった。


スマホを片手に固まる蔵馬。
そのスマホから聞こえる飛影の怒鳴り声。
いきなり想い人と話せと言われ慌てているなどとは思わない蔵馬は、単純に飛影が怒っているものと思い怖くて言葉が出てこない。

だが、

このままにはしておけない。電話を切るなんて事は出来ないし、幽助はスマホを受け取らないだろう。
これは手に取ってしまった責任として諦めるしかないのか。

蔵馬は一つ、深呼吸をしてスマホに耳を当てた。


「あ…あの…。」

ピタリと止む怒鳴り声。
『こんにちは。あの…判りますか?』

「?!」

突然聞こえた蔵馬の声に固まる飛影。
まさかこんなことになるとは…。鈴木を捕まえ幽助と連絡を取ったことを後悔した。
だが、今さらそんなことを思ってもどうしようもない。蔵馬だってきっとこの状況に困惑しているはずだ。
どうにか心を落ち着け動揺を悟られないように口を開く。


『あぁ……蔵馬、か?』



初めて聞く、飛影の口から発せられた自分の名前。
てっきり『コンビニの奴』とか言われるかと思ったのに…。
顔が紅潮するのが判った。
幽助に見られないよう背を向ける。


…出来ればこんな形でなく呼ばれたかった…。

今から飛影に嘘をつく心苦しさにそう思わずにはいられなかった。

自分の後ろで祈るように見詰める幽助を少し睨み付け、飛影を説得する覚悟を決め口を開いた。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆

すみません…。長々と本当にすみません…;
ただ飛影に名前を呼ばせたかっただけなのに…こんなに長くなるとは…(-_-;)
終われませんでした…;

また続き描きます。
こんな初々しい二人を応援して下さると私もとても嬉しいですo(^o^)o



拍手有難うございます!
続き頑張って仕上げます!!
あなた様のポチッで、私は頑張れます~(^з^)-☆
スポンサーサイト
プロフィール

舞彩

Author:舞彩
名前/舞彩(マイ)
生年月日/19××年2月3日
出身地/一番人口の少ない県
趣味/飛蔵(蔵飛も少々)のお絵描きやお話し作り。カラオケ。冬限定で編み物。ダイエット(悲しすぎる趣味)
好きなモノ/飛影と蔵馬!!
チョコレート。和菓子。メロンパン。カフェオレ。紅茶。通販雑誌(見るだけってやつ)
嫌いなモノ/カメムシ(殺虫剤で死なない恐ろしい虫!)、カエル、シイタケ、グリーンピース
幽白歴/約22年。昔と変わらず(それ以上?)今もこの作品、そして飛影と蔵馬を愛しています!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カレンダー
07 | 2014/08 | 09
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31 - - - - - -
カテゴリ
本日までのお客様
リンク
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR