確かな愛の物語

こにゃちは!!昨日1月9日は飛蔵(19)の日.。.:*♡
なーんてTwitterで言い出し、昨日は友達とわちゃわちゃ楽しんだ舞彩です!!

こっちにも何か上げたかったのですが…
仕事明けなのもあり、無理でした💦

来年は何かしたい…(鬼が笑うよ)



さて、やっとこさ続き物のアップです💦

女の子蔵馬ちゃんです💦
このblogを始めたきっかけは蔵馬ちゃんを描き始めたことからだったので…
復活後の続き物一発目はこれにしようと思っておりました。

苦手な方はすみません💦
大丈夫な方、お付き合いいただけたら幸いです✧*。


それでは女の子蔵馬ちゃんが大丈夫な方はどうぞ~(*^-^*)








《第2章・二人の距離》

入学式を終え一年生は教室へと戻った。
まだまだ馴染めない面々のなか、僅かばかりの緊張を胸に担任が来るまでの暫しの休憩時間を過ごしている。


「いや~相変わらずの注目振りだね。蔵馬」
席に着いた蔵馬に話掛けるいつもの顔…
蔵馬と一緒に…という理由もあったが、中学時代からやっているバレーの強豪校ということもあり、同じ高校に来たぼたんだ。また同じクラスになったと判ったときは抱き合って喜んだ。

「何が?」
「だから、ほら、周り見てみなよ」
蔵馬が教室を見渡すと、彼女を見るいくつもの男子生徒の視線が。そして蔵馬と目が合うとぱっと目を逸らす。
明らかに意識しているその様子に、蔵馬は居心地悪そうに視線をぼたんへと戻した。
「さっきの挨拶んときも、みんなあんたの事見てたよ」
「何言ってんのぼたんちゃん…壇に上がるんだから…それを見てただけじゃない」
ほんの少し頬を紅くし、柔らかく否定する。
「またまた~。高校では何人のオトコを泣かすのかね~」
「もう…なぁにそれ…やめてよ…」
からかうぼたんに溜め息交じりで小さな抵抗。

「それに…さっきの挨拶だって緊張してちょっと噛んじゃったし…。カッコ悪かったでしょう?」

飛影に聞かれてたと思うと恥ずかしい。
でも少ししょげる蔵馬もそれはそれは可愛らしくて、思わずぼたんも紅くなる。

「あんたってズルイ…」
素直な女子の感想だ。




「ねぇねぇ、南野さん…?」
会話を楽しむ二人に突如割り込んできた男子生徒。
見上げるとそこにはなかなかのイケメンがにっこり微笑み蔵馬を見ている。
「はい…?」
名前も知らない男の声かけに幾分警戒したように返事をした。
対して返ってきた台詞は予想もしなかったもので…。

「南野さんさ、彼氏とかいる?」


ほぼ初対面の女子にいきなり彼氏の有無を聞くなんて、すごい人だな…。
余程自分に自信があるのか…と、ぼたんは呆れ、クラスの男子は軽い嫉妬の視線を投げかけながらもその勇気を称え、答えに聞き耳を立てている。

だが当の本人の蔵馬はその質問に顔が真っ赤になり言葉に詰まっていた。
その質問に対してでも、もちろん男子生徒に対してでもない。

彼氏

その聞き慣れない単語に照れてるのだ。

「は、はい…い…ます。」
俯き真っ赤な顔で…それでも幸せそうに微笑みながらそう答える姿は、それはもう破壊的な可愛さで…。
答えに落胆する間も無く男子生徒の心を射抜いた。

赤い顔でそそくさと立ち去る男子を見て、彼氏がいようがいまいが言い寄る男は後を絶たないだろうと、飛影のこれからの苦労にちょっぴり同情するぼたんだった。



そんなぼたんを他所に蔵馬の頭の中では先程の単語が反芻されていた。


彼氏…
カレシ…
かれし…

で良いんだよね?

先輩、付き合ってくれるんだよね?
さっき私のこと好きって…聞き間違いじゃないよね。
夢じゃないかな…。
それにさっき先輩、私のこと蔵馬って呼んだ。
蔵馬って…。



『蔵馬…』

飛影の声が耳の奥に蘇る。


「っっ…」心臓止まりそう…!!
「ちょっと蔵馬、大丈夫?!」
「うん…ちょっと…先輩の事思い出しちゃって…」

私、今日先輩と放課後会うんだよね…。
大丈夫かな。


一抹の不安が込み上げた。


「蔵馬、あんた顔、めっちゃ赤いよ」
「う、うん…判ってる…。大丈夫…」

赤い頬を隠すように両手で覆い俯くも、その顔は幸せで満ちていた。

三年間の片想いが報われたその様子に、ずっと見てきたぼたんも嬉しそうに微笑む。
去年の飛影が言った『約束』を蔵馬から聞いたときは心底驚いた。
まさか飛影がそんな事を言うなんて。かなりの上から目線ではあるが、飛影が好きでもない相手と付き合うとは思えず、もしかしたら、飛影は蔵馬のことが好きだったんじゃないかと思った。
では何故忘れろなどと言ったのか…飛影の心理などぼたんに判るわけも無く、変に期待させてもと思い蔵馬には言わなかった。
でもこうして、約束通りお付き合いが決まったとなると自分の考えは間違っていなかったようだ。
飛影はきっと蔵馬が好きだったに違いない。何かしらの事情があったのだろう。それはいずれ蔵馬から聞くとして、今は親友の恋愛成就を喜ぼう。
ちょっぴり寂しくはなるけど…。
「蔵馬、良かったね」
笑顔でお祝いの言葉を贈る。
「うん。有難う…」
まだ少し赤い顔でお礼を言う蔵馬。


幸せそうに微笑みあう少女二人を、何人もの男子生徒が見詰めていた。











********

教室から飛び出して行ったまま体育館に来た飛影に何も聞けずにいた幽助は、席につくなり待ってましたと言わんばかりに乗りだし飛影に詰め寄った。

「なぁなぁ!飛影あれホントなのか?南野と付き合うのか?」

人の恋愛事情にどうしてこんなに興味を持つのか飛影にはさっぱり判らないが、幽助には色々と心配を掛けたので素直に話すことにする。クラスの連中も聞いているが…まぁ気にしないでおく。

「あぁ…まぁな…」

飛影のその返事にショックを受ける何名かの女子と驚く男子。
そして何故か喜ぶ幽助。
「!!マジか~。いやぁ~よかった~!!」
「なんでお前が喜ぶんだ…」
「だってよ、あの子が中一のときからずっとお前のこと追っかけてたの見てっからさぁ」

「それホントか飛影!!」
傍で聞き耳を立てていた同級生数人が飛影を取り囲んだ。
「三年間もあんな子に好かれてお前断り続けてたのか?」
「何ですぐに付き合わなかったんだ?」
「信じらんねぇ。もったいねぇ~」
あの美少女にも興味はあるが、あんな子を振り続けてきたなんて、飛影にも興味津々だ。
だが飛影は今まで幾度とされてきた質問に溜め息しか出ない。

「だろ?そう思うだろ?あの子、見た目も良いけど中身もすげぇ可愛い良い子でさ。なのにこいつ、ずーっと相手にしてなかったん…いって!!」
変わりに幽助が答えるが、これ以上余計なことを話されては堪らないと、机の下から飛影の蹴りが入った。

「わぁーったよ…」

飛影の言わんとすることが判ってこれ以上は何も言わないことにした幽助。
「何でお前みたいな無愛想で可愛げの無い奴がモテんだよ。」
クラスメイトの素直な文句に無言で頷いた。

「浦飯だって他校に可愛い彼女がいるっていうじゃねぇか。何頷いてんだよ。」
「あ?いやー…あいつは南野ほどじゃねぇけどな…」
急に矛先を向けられ、らしくなく照れている幽助に、『可愛い彼女』の存在を確信したクラスメイト。
「ったく…何なんだよおめーら…いいなぁ可愛い彼女がいてよ。」
「うっせぇよ!もう散れ!!」
嫉妬めいた台詞に、最後は幽助の怒声が飛んだ。

そんな中もだんまりを決め込む飛影。


彼女…?


蔵馬同様、彼もまた慣れないこの単語に戸惑っていた。






そしてやって来た放課後。
部活もない今日は、生徒は次々と教室から出て行き、友達同士これからの予定を楽しそうに立てている。


「飛影、今日は南野と帰るんだろ?」
「あぁ…」
「喜ばせてやれよな」
「な!?…にを言ってやがる」
「ひひひ!じゃあ明日な。俺も螢子んとこ行くわ」

からかう幽助を見送り、飛影も校門へと向かった。




校門…は止めた方が良かっただろうか…。


向かいながらふと思った。


あんな奴が校門なんて場所にいたら目立って仕方ないんじゃないだろうか。


飛影の心配は見事に的中する。









「ねぇ、南野さんだよね?俺、三年の…」

「誰か待ってるの?良かったら俺たちとさ…」

「無理ならせめてメアドとか教えてくれない?」

「俺、送ってこうか?」



飛影を待っている蔵馬に次々と浴びせられる誘いの言葉。
主に三年のようだが、蔵馬の周りには何人もの男子生徒が群がっていた。

「い…いえ…結構です…」
もっとハッキリと断れば良いのだが、新入生の女の子が上級生の大人と変わらない体格の男に囲まれてビビるなという方が無理だ。

「遠慮しないで~」
…笑顔がもう怖い。


でも、早く追っ払わないと飛影が来てしまう。キッと見上げ、断りを入れる。
「あ、あのっ!私ホントに人を待ってて…!!」

「ねぇ、彼氏はいる?いないなら俺なんてどお?」
…人の話を聞いちゃいない。

ほとほと困り果てていると…
「間に合ってる。そこをどけ」
響くような低い声が割り込んできた。

その声にその場にいる全員が振り返ると、そこには蔵馬の愛しの…
「飛影先輩…!」
心底ホッとして喜ぶ蔵馬の顔に、やはりここはまずかったと、飛影は後悔し自分を責めた。

「え…?君が待ってるの、緋山?」
そして案の定驚く上級生達。
「はい!ですので、失礼します!!」
そんな彼等からさっと離れ、飛影の傍に行くと、二人で学校を後にした。


残された上級生等は先程のクラスメイト同様、
「何であいつはあんなにモテんだ?」
とぼやき、去っていく二人の背中を見詰めていた。







**********

飛影の隣を並んで歩いて下校する…こんなことが出来る日をどんなに夢見たことか…。
蔵馬は世界中の全てのものに感謝したくなるくらいの幸せな気持ちで胸が一杯だった。

「すまん…」
そんな幸せ満載の蔵馬に掛けられた、飛影に言われたことの無い台詞。
「え…?」

「あんなところで待たせて…ああなることが予測できたのに…」

私を…あんな目に合わせたこと…気にしてくれてるの…?
どうしよう…嬉しい…!!


「い…いえ!そんな…大丈夫です」
「泣いてるだろ…どこが大丈夫なんだ」

「え?!」
うそ?!私またこんなトコで…!!

慌ててハンカチを取り出し目元を拭う。


「ご…ごめんなさい…違うんです!!先輩が私を心配してくれたことが嬉しくて…」

「そ、うか…?」
何かそんなことを言われると…自分の言ったことが恥かしくなる。

「それに…皆の前で私のこと、彼女だって言ってくれたみたいで…すごく嬉しかったです。だから怖かったけど…得しちゃった…」


「!!!」

そうか…あれは…そういうことになるのか…。
それにしてもなんでこいつは臆面も無くこういうことが言えるんだ!!

桜色に染めた頬に潤んだ瞳…
そんな顔で可愛いことを言われ、どうにか顔には出さないで居れてるものの飛影の胸中はもうてんやわんやだ。


「あ、あの…先輩…?」
そんな飛影の心情など判らない蔵馬。
先程の自分の言葉がどう飛影に伝わったのか些か不安になり…
「あの…私…先輩の彼女…と、思ってても良いですか?」
恐る恐る尋ねた。


「っっ…そ、うなんだろう?」
大丈夫だ、まだ顔には出ていない。改めて聞かれると本当に恥かしい。

視線を下に落とし照れ臭そうに答える飛影を見て、蔵馬は花が咲いたように笑う。
「嬉しいです…ホントに…夢みたい!!」

その顔を横目で確認した飛影の心に広がる安堵と後悔。


もっと早くお前の気持ちに応えていたら、この顔をたくさん見れたのに…。


あまりに子供だったあの頃の自分を呪いたくなる。


「先輩、これからよろしくお願いします。」
あんなにたくさん泣かせたのに、自分の隣で幸せそうに笑う蔵馬に愛しさが込み上がる。
二人で帰る。ただそれだけのことも、こんなにも嬉しい。

でも、


「蔵馬…」

「は…はい…」
愛しの先輩が自分の名を呼ぶ声。まだ慣れないその呼び方に心臓が跳ね上がる。

先輩…蔵馬って呼んだ…。
嬉しい!!
どうしよう…私顔赤くないかな?

落ち着けるように胸に手を当て、飛影の言葉を待った。


「お前、その敬語と先輩っての、止めろ」
こういうことは初めが肝心なもの。早めに訂正させなければ。

「え…」

名前を呼ばれただけで心臓が飛び出そうになっている蔵馬にはかなりの難題だ。
でもそれもまた彼女の特権のようで嬉しい。


「えと…じゃあ…飛影さん?」
「さんも余計だ」

「え?!」

「『彼女』なら対等だろう?呼び捨てで良い。」
ちょっぴり照れたように、ぶっきら棒に言う飛影に“呼んで欲しい”のだと解釈した蔵馬。

ちょっと恥かしいけど…
勇気を出して声に出す。


「ひ、え…い…」
ぽそっと一回。


自分を呼ぶ幸せに満ちた顔…
目が釘付けになる。


「ひえい…」
確かめるようにもう一回。


そしてその声は、水面に舞い落ちる花弁の様に、


「飛影…」
最後にもう一回、今度はハッキリと。


一つ一つ、波紋の様に広がり飛影の心に染み渡る。



「…っっ…やっぱりまだちょっと恥かしいです…ね…」
照れ笑いを浮かべ、飛影のいる右側を向くと…

「~~~~~~~~っっっ」
自分から顔を背け俯き、耳まで真っ赤にした飛影が。
「!!!???」
自分も顔が紅潮するのが判り、飛影から顔を背ける。



え?え?
せ…先輩が耳まで真っ赤?!
何だか可愛い…。
先輩がこんなに照れるなんて…私…自惚れても…良いのかな…。



くそっ!なんだ…?何なんだあの声と顔は…!!!!
反則だろあんなの!!
名前くらい平気だと思ったのに!!






顔を真っ赤にして歩く二人の間の距離は10センチ。
もっとくっつきたいけど、まだ出来ない。
もどかしくて、ちょっぴり悔しい…。


でも、

そんな距離さえ愛しい、そんな帰り道。




続く♬*゜

*.:・.。**.:・.。**.:・.。**.:・.。**.:・.。**.:・.。**.:・.。**.:・.。**



お疲れさまでした~💦
相変わらず甘っちょろくて稚拙な文章ですみません💧

でも少しずつラブラブな二人を登場させられてホッとしております(*´ω`*)

これからどんどんラブラブ甘い二人が出てくると思いますが…(^_^;)私自身はむっちゃ楽しく愛を込めて書いておりますので💦
優しーーーく見守って頂けたらと思います(*´ω`*)ゞエヘ



ご覧いただき有難うございました!!




拍手有難うございます~‹‹\(´ω` ๑ )/››‹‹\( ๑´)/›› ‹‹\( ๑´ω`)/››~♪
次も頑張ります✧*。
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確かな愛の物語①

女の子蔵馬ちゃん高校生編でございます。

前回同様、安易なタイトルで…恥ずかしいですが…(艸_・*)
でもやっぱり敢えてこのままで….。.:*♡




それでは女の子蔵馬ちゃんが大丈夫な方は追記よりどうぞ~(*´∇`*)


あ!ハードルは思いっきり下げてお読みくださいね(*´ω`*)ゞエヘ💦








続きを読む

「先輩」

五月ですね♪

オンリーまで一ヶ月ちょい。
風薫るどころか暑いとさえ思うこんな時期に、いまさらバレンタインとホワイトデーネタです(=ω=;)

以前バレンタインのお話しを載せた際に「女の子蔵馬ちゃんのバレンタインも読みたい」とリクエストを頂いておりました。
あれから二ヶ月半…。
やっと出来ました。

もぅ…小説ってホントに難しい!!!

一週間で一行しか進まないとか…もう…
改めて己の語学力の無さを痛感しました。


それでもどうにか完成させることが出来てホッとしております。

少しでも楽しんで読んでいただけますように…(*˘︶˘*).。.:*♡




拍手コメントの御返事は後程させて頂きます( *´﹀` *)







『先輩』

道場からの帰り道…少し奥に入った通りにある雑貨店。
何度か店の前を通ったことはあるが、飛影がこの店に実際に入るのは初めてだった。

店内はやけにキラキラして騒がしい。
色鮮やかなアクセサリーや可愛らしい雑貨や人形、やたらとヒラヒラした服などがところ狭しと置かれている。
居心地が悪そうに飛影は雪菜の後ろに立っていた。

「兄さん。ほら、ボーッとしてないで。選ぶのはあくまで兄さんよ。」

「…判ってる…。」

蔵馬へのホワイトデーのお返し。一体どこで何を買ったら良いのか判らず、たまらず飛影は雪菜に相談をした。
そこで連れてこられたのがこの女の子感満載の店だった。
蔵馬も好みそうな店ではあるが、一人では到底入れなかったであろう。

自分はあくまで付き添いできた…そう言わんばかりに雪菜の後ろにピッタリ張り付いて店内を見回した。

ふと、目に留まった、一つのアクセサリー。
赤く輝くそれはガラス製の薔薇のモチーフがキラキラ輝いて綺麗で…
「…。」
思わず足を進め手に取る。

思い浮かぶのはもちろん、唯一人。

「いらっしゃいませ。こちら、素敵でしょ?作家さんの手作りで一点ものなんですよ。」
突然声を掛けてきた店員。
明らかに彼女へのプレゼントを探しているのであろう学生を微笑ましく思っているのか、やたらとニコニコしている。
そんな店員の隣にいることがやけに気恥ずかしく、助けを求めるように目線を雪菜に向けた。

兄の視線に気付いた雪菜。
さすが双子といったところなのだろう、飛影が愛想の良い店員に戸惑っていることを即座に察知し近付く。

その兄の手には薔薇のアクセサリー。
何を思い手に取ったのかは一目瞭然で。

自分の兄にしては良いものを選んだと思い、
「へぇ~可愛いじゃない。ペンダントにもなるし…クリップも付いてるからブローチにもなって。」
素直に称賛の言葉を述べた。

「でしょう?帽子やバッグに付けても可愛いですよ♪」
そしてすかさず入る店員のオススメの言葉。

「じゃ、これにする。」

「有難うございます~♪」

二人の女性に後押しされ、蔵馬へのプレゼントは意外にもあっさり決まった。
決して適当に選んだ訳ではなく、本当に蔵馬に似合うと思って手に取ったのだが、飛影は胸を撫で下ろした。
こんな店は自分にはあまりにも不釣り合いで居心地が悪い事この上ない。
一分でも早く店を出たかった。

そんな気持ちがレジまで向かう足を早める。

その途中、あるものが再び飛影の目に留まる。
一刻も早く出たかったはずなのに、飛影は足を止めそれを見詰めた。

(これ、確か…。)

「そちらもお買い上げになりますか?」
それに気付いた店員も立ち止まり、声をかける。

「それ?ちょっと子供っぽくない?」
後ろからひょっこり顔を出した雪菜にそう言われるも、
「良い。これも買う。」
飛影は手に取り店員に渡した。


ラッピングされる二つの贈り物を眺め、飛影は中学時代の事を思い返していた。



三年越しになったな…。
あいつは…気にしないって言うだろうが…。




*********

その日は朝から青空が広がり、今後の環境は大丈夫なのかと心配になるほど心地のいい陽気だった。

「飛影!今日は裏庭か?」

昼休憩、席を立った飛影にからかうように幽助が問いかけた。
飛影の反応は、いつも通り。

一睨み利かせ、無言で教室を出ていった。
「南野によろしくな~」
そんな飛影の背中にさらに投げ掛けるその言葉もいつもの事。


アイツのからかいにも慣れたな…。


苦笑いしつつ裏庭へと向かった。


渡り廊下を横切り、校舎裏へ。
角を曲がると、花壇の前にしゃがみこんで薔薇を見詰める、いつもの蔵馬の姿があった。

行く度に目にするその光景に、酷く落ち着く自分がいた。

「あ!先輩!!こんにちは。」
嬉しそうに振り返る、蔵馬の顔にも。


返事を返さずベンチに向かうのもいつもの事。
腰を掛けると、蔵馬がゆっくりと近付いてきた。

「あの、先輩…これ…。」

差し出されたのは小さな可愛い紙の手提げ袋。
問い掛けるように視線を蔵馬の顔に向ける。

「あ、の…。バレンタインの…チョコレートです…。」

時期的にそういったものだとは理解できるが…。
少し驚いた。
何故なら…

「まだ先だろ…。」

そう。今はまだ二月の始め。
バレンタインではないのだ。

「はい、判ってますけど…教室まで持っていくのはご迷惑かと思って。
バレンタイン当日に先輩が来てくださるかどうかも判らないので。」


過ぎてしまうよりは早目に、そういうことか…と飛影はこの行動を理解した。

理解はしたが…。

「いらん。」
蔵馬を見詰めたままきっぱりと言い放った。

「そう、ですか…。」


一瞬、泣くのかと思った。
それくらい、瞳が陰り、揺らいだのだ。

それは酷く儚げで、綺麗で…


飛影は思わず目を逸らした。



蔵馬はそれ以上何も言わなかった。
手にしていた紙袋を隠すようにしてベンチに座り、何事も無かったように可愛い笑顔を飛影に向け、優しく、穏やかに語り始める。

そして、時折り返す飛影の短い返事にもそれは嬉しそうに。

その変わらない様子に幾分ホッとしながらも、先程の僅かに陰った蔵馬の顔が頭から離れてはくれず。

脇に置かれた紙袋がやけに目についた。






「あの、これ…。」

三日後、飛影が裏庭へ行くと、蔵馬がまたあの紙袋を手渡してきた。

「しつこくてごめんなさい。」
ほんの少し悲しげに微笑み紙袋を少し上げて差し出す。

「いらん。と、言ったはずだ。」
今度はすぐに目を逸らした。
あの顔を見たくなくて。

「そうですか…。すみません。」

別に悪いことをしてるわけでもないのに申し訳なさそうに謝る蔵馬。
僅かながらの罪悪感を感じながら、飛影はベンチに進み腰を掛けた。

次いで蔵馬も。


紙袋を前回のように飛影とは反対側の脇に置き話し始める。


花壇の花の事。
薔薇の種類や花言葉。
ぼたんやコエンマの事。

蔵馬の話すことはいつも飛影にとってはどうでも良い話ばかり。
でも不思議と嫌だとは思わなかった。


ただ、それが何故なのか考えてしまう事がたまらなく嫌だった。






それから飛影は裏庭へ行くことを躊躇うようになった。

またあのやりとりを繰り返すのかと思うと気が重かったのだ。


教室の自分の席で、幽助の話を聞きながら窓の外を見る。

今日も晴天。
蔵馬はきっと裏庭にいる。

あの紙袋を持って。
薔薇を見詰め、自分を待っている。



アイツが勝手にしてることだ。
俺は受け取らないと言ったはずだ。
罪悪感など…感じる必要はない。

雨でも降っていれば、裏庭にいるアイツの事など考えなくてもすむのに。



晴れた空を忌々しく思いながら、飛影は机に視線を落とした。






バレンタイン当日。
飛影にとっては非常に煩わしい日となった。
直接手渡してくる勇気のある女生徒はいないものの、席に着けば勝手に入れられたチョコレートらしきもの。
体育の授業の隙に教室に忍び込み机の上に置いている女生徒までいた。

甘いものは嫌いではないが、こういったイベントや恋愛事に興味もない飛影は溜め息しか出ない。
羨むクラスメイトを尻目に、そしてクラスの女子の目を気にもせず、飛影はその贈り物を纏めて教室の後ろにあるロッカーの上に放り投げた。

そして、教室を出れば話があると声を掛けられ、断れば泣き出す始末。

全くもって女というものは面倒臭い。


面倒臭い…のに…。



「あ…飛影先輩…。」

どうして、来てしまったんだ。
幽助にからかわれないよう、こっそりと教室を出てまで。


「嬉しいです。今日こそ…来てくれないかと…思ったので…。」
一見、明るい可愛らしい笑顔に見えるが、先程までは本当に諦めていたのだろう。
陰りを残したまま。


また、だ。
また、こんな顔をする。だから、来たくなかったのに。
どうして…。
「別に今日がどうとかじゃない。たまたまだ。」
訳の判らない苛立ちが、口調を強めた。


そんな飛影の苛立ちだけが蔵馬に伝わり、申し訳なさそうに例の紙袋を差し出す。
「じゃあ…やっぱり、これはダメですか…。」

三度目の正直を期待している…そんな顔ではなかった。
伝わるのは…直向きで、必死な、恋心。



いつものように、言えば良い。「いらん」と。
言ったところでこいつは変わらない。
晴れた日にはいつもここにいる。
俺を待っている。

あの笑顔で。



ただ、今この瞬間、陰るだけ…
「腹が減った。」

「え?」

「だから、腹が、減ったと、言ってる。」
出てきた言葉は、あまりに可笑しなものだった。
さっき、お昼を食べたばかりなのだ。
減ってるわけがない。

そんなことは蔵馬だって判っている。

でももう、後には引けず…。
「お前、食うもん持ってないか?」
飛影は両手をポケットに突っ込み顔を背け小声で続けた。

「あ、の…チョコレート…なら。」
信じられない、そんな顔。
震える手で恐る恐る紙袋を差し出しす。


「それで良い。寄越せ。」

「…!!」
その言葉に蔵馬の顔に大輪の花が咲いた。

判っていたが、あまりに恥ずかしくて蔵馬の顔を見ることが出来ない。
飛影は足早にベンチへと向かい、強く腰を掛けた。
そして感情を読み取られないよう鋭い視線を蔵馬に向け、
「腹が減ったから、食うんだからな!」
と、荒げて言い放った。

「はい!!」
怒鳴ったにも関わらずキラキラした笑顔を向け近付いてくる蔵馬。
足取りは今にも浮かび上がりそうなほど弾んでいる。

そんな蔵馬に差し出される贈り物を、飛影は視線を逸らし黙って受け取った。

中には可愛くラッピングされた小さな箱。リボンには小さなバラの造花が添えられ、いかにも蔵馬らしい…と、そんなことまで思ってしまった。

くすぐったくて落ち着かなくて…
こんな自分はイライラするのに、でもやっぱり嫌じゃない。

この気持ちは一体何なのか。

考えればすぐに出そうなその答えを、やはり導き出したくはなくて。

飛影は半ば強引にチョコレートと一緒に飲み込んだ。


そんないつにも増して無愛想で無口な飛影の隣で、蔵馬の笑顔はこの日陰ることはなかった。






その日の道場からの帰り、立ち寄ったコンビニのある通りで、いつもは気にも止めず通りすぎる店の前に飛影は一人立ち止まっていた。
ショーウィンドウに並べられたキラキラしたアクセサリーと共に、そっと置かれた小さな薔薇の飾りの髪留め。

派手ではない控えめな可愛らしさが、蔵馬を思い出させた。


バレンタインの後にはホワイトデーがあることは、もちろん判っている。

判っているが、自分は渡す気など毛頭ない。
蔵馬だって、そんなものは期待してないはず…


だけど…

もし渡したら…蔵馬はどんな顔をするのか。


少しだけ、見てみたいような。
そんな気がして。


店内から出てきた客の女の子達がその考えを遮断するまで、飛影はそれを見詰め続けた。




そして、

あのとき見てみたいと思った蔵馬の顔は、三年後の今、目の前に。


「飛影、ありがとう~!!」
ホワイトデー、飛影の部屋で渡された二つの贈り物を手に、蔵馬は満面の笑みを見せる。

「二つも?」

「一つは…三年前の…分…。」
ばつが悪そうに瞳を逸らして答える飛影。
「もぅ…気にしなくても良いのに…。」
予想通りの蔵馬の台詞に思わず零れる、苦笑い。

「でも嬉しい!ありがとう!!」
後ろめたさは拭えないが、素直に喜ぶ蔵馬の姿が心を少し軽くさせた。


「開けても良い?こっちが三年前の分?」
小さく頷いた飛影を確認して、蔵馬は包みを開けた。
子供のように瞳を輝かせる様子に、僅かな不安を募らせる。

だってそのプレゼントは…

「…要らなかったら、捨てていぞ…。」

「何言ってるの…そんなワケ…」

言いながら出された中身は、可愛らしいピンクの薔薇の髪留め。

それは、高校生の自分には少し子供っぽいようにも見えた。

途端に脳裏に浮かんできたのは、中学生の飛影の姿。


これは…
あの頃の自分への贈り物だ。

『先輩』が、私に。



蔵馬はその小さな薔薇をそっと頭に乗せた。
そして
「先輩…。」
あの頃の飛影に呼び掛ける。

「な、んだ…いきなり…。」
突然の懐かしい呼び名に戸惑いを隠せない。

「先輩。」


あぁそうか…。
こいつは今、あの頃の俺に…。


「飛影先輩、有難うございます。」

「あぁ…。」
蔵馬の優しさが素直に嬉しくて、飛影の顔も綻ぶ。

あまりに幼く、情けなかった中学時代。
何も出来なくて、肝心なことは何も言えなかった。

少しでも返せてるだろうか。
俺に向けられていた蔵馬の想いの分を。



「…私に…似合ってます?」

「あぁ、似合ってる…。」

恥ずかしそうに答えてくれる今の飛影に三年前の姿を重ね、蔵馬は愛おしそうに微笑んだ。

きっと、あの頃も飛影は今と同じくらい自分を想ってくれていた。
上手く出せなかっただけ。

今も全部出してくれる訳じゃないけど…。
気持ちは充分過ぎるほど伝わってくる。
だから、自分は飛影の分もたくさん言葉で伝えよう。

「飛影…大好き!」


大人びた笑顔を見せる蔵馬の髪の上で、小さなバラが無邪気に光る。


飛影はそのバラをそっと包み込んで引き寄せた。

二度と傷付けることの無いよう、優しく。





end





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


お疲れ様でした~(*^-^*)

い、いかがでしたでしょうか~💦(*uдu)φモジモジ

私と致しましてはですね、本当に難しかったのですが…高校生の二人を少し登場させられてちょっと楽しかったり…(*^ω^*)
飛影くんの成長が少ーーーしお見せできたかなぁ…なんて…💦


うん、楽しかったです!


創作というものはどんなものでも難しくて大変なものだとは思いますが、出来上がったときの嬉しさは堪らないですね!✧*。
これがあるから、きっとどんなに難しくても下手っぴでも、また作ってしまうのだと思います。


大好きな飛影と蔵馬のお話しを、私のネタの続く限り!!これからも作っていきたいと思います。


ここまでお読み頂きまして有難うございました!❀.(*´▽`*)❀.

また時間ができたときに挿し絵とか載せたいと思いますので、見てやってくださいませ♪


最後になりましたが、リクエストをして下さいました神楽まもるさま、有難うございました!本当に楽しく作らせて頂きました!
少しでもお気に召して頂けましたら幸せでございます(*´∀`*)♬✧*。






拍手有難うございます❀.(*´▽`*)❀.
上の二人に負けないくらい幸せです~♡♡♡

女の子蔵馬ちゃんの一年後の春

飛影先輩とお別れしてから一年が経ちました。
今日は高校の入学式です。

蔵馬ちゃんは鏡の前で何やらそわそわ…。


だ、大丈夫かな…
おかしなトコ…ない…?

この制服…似合ってるかな…;






やっと、一年…


もうすぐ…会える…

飛影先輩…。





。.。・.。*゚+。。.。・.。*゚+。。.。・.。*゚+。。.。・.。*゚+。。.


御覧頂き有難うございました(*^-^*)



昨日は我が家の長男の高校の入学式でして♪
それに合わせてちょいと入学式当日の蔵馬ちゃんの様子を書いてみました~(*´∀`*)


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

コメント御礼~♪

☆とろみさま
蔵馬ちゃんへのコメント有難うございます!!
あははは( ̄▽ ̄;)
ホントすみません~飛影がお子ちゃまで…;
蔵馬ちゃんをたくさん泣かせてしまいました(´Д`ι)アセアセ

でも!ご安心下さい!
前回も書きましたが、いい加減にしろ!と言いたくなるくらいラブラブになっていきますので!!(*pωq*)

飛影がどれだけ蔵馬ちゃんの事を好きなのか、拙い文ではありますがお伝えできればなぁと思います♪

体調面まで気を遣って頂いて有難うございます。
これからも頑張ります!!



☆みつきさま
蔵馬ちゃんのと飛影くんへのきゅんきゅんコメント、光栄でございます~(*´∀`*)

第2ボタン!!これですよ。
『第2ボタンを涙ながらに受けとる蔵馬ちゃん』これを書きたくてこのお話しを作ったようなものでして(^_^;)
結果、中学時代では結ばれない形となってしまいましたが、どうにか終えることができて、そしてみつきさんにきゅんきゅんしたと言って頂けて本当に嬉しいです!!

むぼーにも高校生編なんてものを作ってしまっていますが(^_^;)、ラブラブな二人を呆れつつ(笑)見て頂けたらなぁと思います♪
続きも頑張ります!!
コメント有難うございました(*^-^*)

あ、落書き帳は無事に買いに行けました♪五冊買ってやりましたよ!(笑)
そしてごちゃごちゃの机の上を片しました~( ̄▽ ̄;)
雑な私はすぐにごちゃごちゃにしてしまうので気を付けたいと思います~;



☆そらこさま
コンビニ蔵馬くんへのコメント、有難うございます~♪
ホントに、つきあっているようなものですよね!
暫くはこんな感じでだらだら行きそうな予感が…( ̄▽ ̄;)
お!!そして!歩くときに蔵馬くんに寄る飛影先生に食い付いて頂けました?!
キャァ♪(*ノ∀ノ)有難うございます~(*´∀`*)
あそこは何気に私も好きなトコでして♪
めっちゃ嬉しいです!

あれはね、飛影先生無意識なんですよ♪
もう無意識に蔵馬くん大好き!!を出しちゃってるんですよ!飛影先生は!!
蔵馬くんはどっきどきですよ(*^-^*)

蔵馬くんも蔵馬くんでそんな事をしちゃってるんですけどね;

お互いが無意識なラブラブ攻撃にどぎまぎする様子をこれからもお届け出来たらなぁと思います♪

そして、そらこさんご希望の♪玄関で押し倒す飛影先生も!頑張って書きたいと思いますので、これからもどーぞお付き合い下さいませ~(*´∀`*)

コメント有難うございました~!!







拍手有難うございます!
今日は冬のように寒いですがポカポカ幸せです~(*´∀`*)

小さな恋の物語・第4章 決意と覚悟。

やはり、仕事明けで買い物に行って絵を描く気力は無かったヨ(^_^;)

蔵馬ちゃんのホワイトデー話しもまだ出来ないので、先に出来ている『小さな恋…』をアップしたいと思います。



これも予定より遅くなってしまいましたが…;

女の子蔵馬ちゃんが平気な方はどうぞ読んで下さいませ(*>ω<*)


それではどうぞ~♪



第4章・ 決意と覚悟

「う~ん…まぁ多少の問題はあるものの、お前は元々やればできるやつだし、大丈夫だろう」

秋の終わりに行われる進路決定の面接、学力テストを前に飛影はコエンマと教室で向かい合っている。
志望校は変わらず、幽助と同じ高校だ。

一、二年のサボリが響き、三年になったばかりの頃は合格圏ギリギリの飛影だったが、さすがに三年になるとそこまでサボる事も無くなり、コエンマも言ったとおりやれば出来る奴なので、今は余裕の合格圏内になっていた。

正確には、あの夏の日から…だが。

夏の出来事以降、飛影は真面目に学校に来て授業を受けていた。

蔵馬への想い、自分の想い、考えていると苦しくて頭がおかしくなりそうで、何かしていないと落ち着かなかった。
朝から学校に来て、授業を受け、昼休憩には屋上で勉強する…といった有様だ。夏休みは生まれて始めて図書館で勉強した。
そんな飛影に一番驚愕していたのはいつも一緒に屋上に行く幽助。
だが、自分の前で黙々と参考書を読む飛影に感化され…たのか焦ったのか、次第に一緒に勉強するようになり、おかげで彼も余裕…とまではいかないが合格圏内になっていた。




飛影はあれ以来裏庭に行っていない。
朝から遅刻せずに来ているのに、蔵馬に会わないように裏の抜け道から入る徹底振り。

蔵馬への想いを痛いほど思い知らされた飛影。
その苦しさから出した答えが、会わないこと、だった。
三年だから、受験生だから、勉強するから、無理に口実を作ってあの裏庭へ行かなくて済むように。

会わなければきっと忘れられる。
いや、忘れよう。


今はまだ同じ学校に居るから時々は思い出してしまうけど、卒業してしまえばきっと。
あいつだって…。

そんな思いで日々が過ぎるのをただ耐える毎日。





「安心して卒業できそうだな飛影、ワシも一安心だ。
悔いの残らないように、残りの学校生活も頑張れよ。」


すべてを見透かしたようなコエンマの台詞に、軽く舌打ちをして飛影の面接は終わった。
教室を出て先に面接を終えた幽助の元へ行く。

三階から一階へ、幽助が待っているはずの玄関へ向かう。
最後の段を下り、角を曲がると玄関。曲がろうとして…慌てて隠れた。



蔵馬が、いた。


玄関の下駄箱の前、幽助となにやら話していた。
蔵馬はこれから校内の花壇の手入れなのだろう、ジャージ姿だ。飛影を待っていている幽助と偶然会った…といった感じだ。

時折聞こえる笑い声に少しの安堵と、嫉妬。


幸い、蔵馬は飛影に対して背を向けていたため見付からずに済んだ。

だが…。



「おい、飛影…何隠れてんだよ。おめぇらしくもねぇ。」
やはり、幽助には見付かっていた。
暫くして蔵馬と話を終え、角の向こうに隠れる飛影の元に来た幽助。
誰かに会いたくなくて隠れる…なんてキャラに合わないことをしている飛影にただただ驚くばかりだが、事情を知っているだけにそれ以上は突っ込まない。
ただ、一言、「あいつ、元気無かったぜ…。」とだけ伝え、いつもの道場へと向かった。





「俺らしくない、か…。」
道場の帰り道、学校の玄関で幽助に言われた事を思い出しポツリと独り言を呟く。

本当に…何をしてるんだ俺は…。



あんなに意識しまくって。
“元気が無かった”
それが俺に会えないためだと、まだ想われていると、喜んでいるくせに。


全く…どうかしてる。


深い溜め息を吐き夜道を進む。
時折自分を照らす寂しげな街頭がさらに気分を沈ませた。









**********

蔵馬が元気が無いのも無理は無い。
もう四ヶ月、飛影に会っていないのだ。
以前幽助から聞いた話では受験勉強で忙しい…らしいのだが、それにしても、である。

裏庭へはもちろん本人が来てくれなければ会えないのだから仕方ないとして、校内でも全く見かけない。唯一のチャンスである体育の授業は教室の窓からかろうじて見かけることは出来たが、1年の時と違い、窓からの距離が遠くて移動中もなかなか声を掛け難い上に、いつの間にか校庭にいていつの間にか教室へ戻っている…という感じで、しかも冬は体育館での授業になるため、その姿さえ見られない。

もちろん、想っているだけで良いという言葉に嘘偽りは無いわけで、会えないからといって忘れるわけもそのつもりも無いのだが、刻々と迫る卒業というタイムリミットに焦らずには居られない。


「何か…私…避けられてるのかな…。」

昼休憩、いつもの裏庭でバラに向かって呟く。
12月は晴れていても寒く、コートのフードをこっぽりとかぶった。
そして、
自分で言ってかなり凹んだ。


避けられている?
でも、先輩ってそんなタイプかな…。

避けられてるとして、どうして?

恋愛経験値の低い自分には全然判らない。


あの夏の日…先輩、すごく優しかった。嫌われたようには思わなかったんだけど…。

想ってるだけで良いのはホントなんだけど。
幸せなあの思い出が、ちょっと寂しくさせる。


卒業まであと少し。高校まで追いかけて行くつもりではいるんだけど…。
一年間は確実に会えない。

それまでに、話せるかな。


「先輩…。」

瞳を閉じ、恋する彼を想う。



次、会えたら勇気を出してお願いをしてみよう。

制服のボタンの、予約。






しかし、そんなチャンスが訪れないまま終業式を迎え、式でも飛影の姿を見つけることは出来ず冬休みに突入してしまい、年が明けようとしていた。




大晦日、蔵馬はぼたんと共に近くの神社に来ていた。もちろん新年と同時に初詣をするためである。

そして飛影の高校の合格をお願いするため。

蔵馬からこの誘いを受けたとき、始めは呆れて溜め息しか出なかったぼたんだったが、深夜のお出かけなんて大晦日しか出来ないし、初詣は自分も行きたいし、何より自分が行かないと言ったら一人でも行きそうな気がして、それはあまりに危ないと承諾することにした。

実際には二人でも危なすぎる…と双方の親に止められ、ぼたんの親が同行し、帰りは蔵馬を送る…ということで話が付いた。


新年まであと5分。
蔵馬とぼたんは両親の後ろに付いて境内へと向かう。

地元の小さな神社はちょっとしたお祭りのように賑わっており、皆が新年を待っていた。

参拝のためのをする列へと向かい、ぼたんの両親の後ろに二人で並ぶ。
手にはきちんとお賽銭を用意。
お願い事を思い返し、ぎゅっと握り締める。


「ごめんね、ぼたんちゃん、付き合わせちゃって。」
「良いって。私も来れて楽しいし。」

この日何度も聞かされた蔵馬の謝罪と感謝の言葉にぼたんは笑顔で返した。

でも、初詣に行きたいって言う理由には呆れるけどね…なんて付け加えて。




近くでカウントダウンが聞こえる。
…6,5,4,3,2,1、

口々に交わされる新年のお祝いと挨拶。
「ぼたんちゃん、おめでとう。今年もよろしくね」
「こっちこそ、よろしく」
可愛らしい女の子達の新年のご挨拶にぼたんの両親も笑顔だ。
そんな両親にも
「おじさん、おばさん、おめでとうございます。」と丁寧に頭を下げ挨拶をした。




ゆっくりと、少しずつ進む列。
冷えた手にはぁ~っと息を吹き掛け、その時を待つ。

まず目の前のぼたんの両親が参拝をし、その様子をぼたんと蔵馬はじっと見詰めた。
そして、そのお手本を思い出しつつ二人並んで参拝をする。



ぱんぱん!!


先輩が、高校に合格しますように。
卒業までに、もう一度、お話が出来ますように。






「ねえ蔵馬、おみくじ引く?」
参拝を終えてお守りや絵馬を購入する場所へ行き、再び順番を待つ。

「私は良いや。結果が悪いと凹むから。」
笑顔で答える蔵馬だが、どこか痛々しく、ぼたんの顔が曇る。
そんな自分に気を遣わせたくなくて、
「あ、じゃあ私あそこの焚き火のとこ行ってるね。寒くなっちゃった。」
と告げ、走り出そうとして…

心臓が、止まるかと思った。


振り返ると、そこには同じく初詣に来た幽助。
そして、飛影がいた。


「み、なみの…?」

「せん…ぱい…。」





*******

神社の境内の片隅、少し雪の残る場所に来た二人。


「ご…めんなさい…。」
鼻を啜りながらの謝罪。


久し振りに、それもいきなり飛影に会えた驚きと嬉しさで蔵馬はその場で泣き出してしまったのだ。
騒がしい場所とはいえ、誰もが笑顔のこの時に涙する美少女は周りの注目を浴びた。

慌てたぼたんと幽助は泣く蔵馬と呆然とする飛影を引っ張り、この場所へ連れてくると、
「え…と…じゃあ私らあそこのテントのトコにいるね」と、お酒や豚汁を振舞うために境内に設置されているテントを指差し、そそくさと離れていった。


残されたのは涙に濡れる蔵馬と、気まずい顔をする飛影。


とにかく公衆の面前で泣き出してしまったことを謝った。



「本当に久し振りに会えて…嬉しくて…。
また迷惑掛けちゃいましたね。」


泣きながらも笑って話す蔵馬に飛影の胸が痛む。

久し振りも何も、自分が避けていたのだから、会えなかったのは当然なのだ。

まさかこんなところで会うなんて…。

幽助に「受験生だし、願掛けに行こうぜ!」なんて誘われ、面倒臭いと思いながらも家に一人でいても気を抜くと蔵馬のことが頭に浮かんでしまうし…と来てみたら、浮かんでしまうどころか本物が目の前に現れた。

必死に忘れようとしたこの四ヶ月が無駄になってしまったと飛影は項垂れた。


だって、目の前で見たら、やっぱり蔵馬は綺麗で、自分を思って泣く姿に、戸惑いつつも嬉しいとさえ思ってしまった。

目の前で泣く女にこんな風に思ったことなんてなかったのに。



でも、そんな蔵馬に気の利いた言葉も掛けられず、顔すら見れない。
そんな自分に心底嫌気が差す。

黙る飛影に少しの不安を感じながらも、次はいつ会えるのか判らないという不安が勝ち、蔵馬が口を開く。
「あの…先輩…お勉強どうですか?捗ってます?」
「…あぁ、まあな…。」
飛影にとって勉強は蔵馬のことを考えないようにするためにしているもの。
捗らせなければならない。

そんなことなど知らない蔵馬は、自分に向けられた飛影の声に嬉しささえ込み上がる。
「そうですか…良かった…。
正直、先輩に会えなくて、ちょっとだけ…寂しかったんですけど、先輩の勉強が捗ったのなら報われます。」

本当は全然ちょとだけじゃないのだが、精一杯強がって見せる。
それは当然、飛影にも判って。

この四ヶ月間逃げ回っていたことを少し後悔した。
そしてその後悔を必死に頭から追い出す。

「先輩は合格祈願に来られたんですよね?」

「あぁ…。」

「じゃあここ、ご利益ありますよ。
私もさっき先輩の合格を祈願したんですけど、もう一つ、卒業までに先輩と話せますようにってお願いしたんです。そしたらすぐ会えたから。」


本当に、本当に嬉しそうに話す蔵馬。

せっかく追い出した後悔が戻ってきそうで、
「…そんなつまらんこと願ってどうする」
跳ね返すように言い放った。

途端に蔵馬の顔に差す陰り。
挫けそうな心をコートを握り締めることで耐えていた。
「…私には大事です…。私の合格祈願なんて必要ないかもしれませんが…。
それにどうしても卒業までに会いたかったんです。でも会いに行くことは出来ないから…神様に…。」



どうしても…?
何か俺に言いたいことが?

避けられていたことの理由か?
それとも、今度こそ付き合ってくれと…?

そのどちらも今の自分には答えられそうにないが…。

思案する飛影に、ずっと言いたかったお願いを告げる。
「先輩…卒業式の後、ボタンを頂けませんか?」

出てきたのは卒業生に対する、定番のお願い。
第2ボタンと言わないところがなんとも蔵馬らしくて、可愛くて…。


気を抜くと口元が緩みそうになる。


本当は嬉しいのに。

嬉しくて堪らないのに。


「そんなもの持っていたら、忘れるものも忘れられんだろう。」
口から出てくるのは蔵馬を突き放す言葉ばかり。


その言葉に翡翠の大きな瞳がさらに大きく見開かれる。
「先輩…私…忘れるつもりなんてありませんよ…?」

声が震えていた。

…泣いている…。
顔を見てなくても判った。


「先輩が卒業しても、好きでいますよ私。
ボタンがなくても。ただ、ほんの少しだけ、先輩を感じていたくて…。」

「忘れるさ。一年も会わずに居たら。忘れる。きっと。」

それはまるで、決意のような言い方。

「…先輩は…私に…忘れて…欲しい、ですか?」

「…。」


飛影の無言を肯定と取り、そして理解した。


「…あぁ…そっかぁ…。
それで私に会わないようにしてたんですね…。
私、やっぱり避けられてたんだ…。」


飛影は目を固く閉じた。
『やっぱり』
蔵馬は薄々感じていたのだろう、自分が避けられていることを。
でもそれを必死に考えないようにしていた。
その気持ちを思うと飛影の胸も張り裂けそうだった。

「あの夏、最後に会った日、先輩すごく優しかったから、嫌われてはいないって思ったんですけど…。
好きとか、嫌いとかじゃなくて、卒業するまでの間って決められてたんですね。
だから私が忘れられるようにって。」



蔵馬の言葉が胸に刺さる。
苦しい。


「でも、先輩…それなら、いっそ迷惑だって言ってしまったほうが、私を避けなくて済んで楽だったのに…。」


本当に、迷惑ではないんだ。言えるわけがない。
ただ俺が、好きなことが辛くて、忘れたくて、逃げただけ。

「高校に入ってまで想われるのは…迷惑ってことですよね…。」

違う。
それ以上言うな。俺は何も言えない。
言えないからお前は肯定だと…。


「…判りました…。約束、ですものね…。

今まで、私の気持ちに付き合って下さって、ありがとう…ございました…。」


最後は完全に涙声で。
これ以上は聞いていられなくて。
飛影はまた逃げるように走り出した。


「おい!飛影?!」
テントには行かず、そのまま神社を出て行く姿が見えて幽助が追いかける。
幽助と一緒にいたぼたんは慌てて蔵馬の方を見た。


境内の隅で一人しゃがみ込む姿。
泣いているのは一目瞭然で。
飛影に何を言われたのかも予想がついた。

本当なら一人にしてあげたいけど、こんなトコに置いて行けない。

ゆっくり近付いて肩に手を置き、優しく話しかける。
「蔵馬…もう寒いし、帰ろう?
あ!帰りに肉まんでも買ってく?身体冷えたもんね。」

何も聞かず話し掛けてくれるぼたんの優しさが沁みて、思わずぼたんに抱きついて泣いた。

声は、もう抑えられなかった。


「蔵馬…。」
優しく頭を撫で呼び掛ける。

「ぼ、たんちゃん…。先輩、も…忘れろって…。め、いわくって…。」

こんな風に泣く蔵馬を見るのは初めてだった。
出来ることなら今すぐ飛影を追いかけてぶん殴ってやりたい。
でも…

「ごめんね。せっかくの楽しい初詣だったのに…。」

こんなときにまで友達を気遣う優しい蔵馬がそんなことを望むわけもなく、その代わりにぎゅときつく抱き締めた。

「こんなときに私のこと気遣わなくていいよ。私に泣きついてくるのなんて初めてだから、ちょっと嬉しいよ。
でもさ、冷えるから、帰ろ?風邪引くよ。」

「ん…。ありがと…。」

無理はしてるけど笑ってお礼が言える自分にホッとする。

ぼたんが居てくれてよかった。
一人だったらきっと、ここから立ち上がる気力さえ湧かなかったに違いない。

親友に感謝して、少し心配そうにこちらを見ている彼女の両親の元へと急いだ。




*********

春の気配が見えるものの、まだまだ冷える3月初め、飛影の卒業式が行われた。

あれからもちろん、飛影が裏庭の花壇に来ることは無かったが、蔵馬を避けることも無くなった。
もう自分を見ても話しかけてこない事が判っていたからだ。
残りの学校生活は普通に玄関から入り、普通に過ごした。

何度か蔵馬とすれ違ったが、もう挨拶をしてくることも無くなった。

それを、寂しいとも辛いとも思わないようにした。
自分が突き放したのだから。

あれだけ声を掛けてきていた蔵馬が、飛影と無言で通り過ぎている様子は、それを見た生徒からあっという間に広がり、飛影が南野を振った…と噂になった。
その真意を聞いてくる連中は何人もいたが、飛影は無言を突き通した。
そして、振られた蔵馬に優しくして振り向かせようとしてる輩がいる…なんて話もちらほら聞いたが、飛影は考えないように努めた。

あれだけ蔵馬を傷付けたのだ。

いまさら蔵馬に誰が近付こうが、それをどうこう思って良いはずが無い。



大丈夫だ。
きっと。忘れられる。
あいつも。
俺なんかよりずっといい奴が現れたら、きっと。









「卒業生、退場!!!」

会場に別れの音楽が流れ、 拍手をする在校生の花道を少し恥ずかしそうに卒業生は次々と去っていく。


飛影は少し俯き、瞳を伏せて花道へと向かった。

視界の端に入り込む在校生。

蔵馬の席のある二年生の場所はもうすぐ。


これで…終わる。もうすぐだ。
もう、あいつに会うこともない。

…最後にもう一目、あの翡翠色の瞳を…。



そんな欲求に勝てなくて、思わず目線を前に向けてしまった。

それは真っ先に視界に入ってきた。
真っ直ぐに、強く美しく飛影を射止める翡翠の輝き。


飛影の姿を自分の瞳に、しっかりと焼き付けるように。
あまりの強い視線に飛影も目を逸らせることが出来ず蔵馬を見詰める。

それは初めて出会った日の事を思い出させた。
あの日も、自分はこんなふうに目を逸らせなくて…。


この光に自分は惹かれ、そして逃げた。



徐々に近付く距離。
一歩一歩進むごとに近付く別れの時。
そして次第に大きく見えてくる蔵馬の姿。

必死に涙を堪えているのが判った。
唇をキュッと噛み締め、肩に力を入れ全身で耐えている。


その様子を自分への戒めのように胸に焼き付け、飛影は蔵馬の横を通り過ぎた。



会場から出て行く飛影の後ろ姿を、蔵馬は後ろを振り返り飛影の背中が消えるまで見詰め続けた。

飛影の姿が消えると、蔵馬は下を向き、その瞳からいくつもの雫を落とした。髪で隠して見えないようにして。

その蔵馬の手は隣にいるぼたんの手をしっかり握り締めている。
声を上げて泣いたりしないように、必死に耐えて震えているその白い手を、ぼたんはきつく握り締めた。








式の後、かったるい担任の挨拶も終わり、教室では、別れを惜しんで泣く女の子、写真を取り合うもの、それぞれが思い思いの中学最後の日を過ごしていた。

「飛影、今日どうする?うち寄ってくか?それともゲーセン行くか?」
感傷的なことには無縁のこの二人はあっけらかんとしたもので、クラスの様子を少し冷めた目で見ていた。
「あぁ、じゃあ今日はお前の家に…」と飛影が言いかけ、何かに気付き止まる。
幽助に向かって顎で教室の入り口を差し、
「…と、思ったが、止めておく。」と言い変えた。

幽助が振り向くと、そこには螢子が何か言いたそうにこちらを見ていた。
「あー…と…。」
気まずそうにする幽助に
「気にせず行け。」と添えて、一人教室を出た。



少し恥ずかしそうに笑い合う二人の様子をちらりと眺め、階段へと向かう。

自分も幽助の様に単純なら、あいつを悲しませることもなかったのだろうか。

幽助をほんの少し羨み、そして出たのは深い溜め息。

この期に及んでまだ蔵馬のことを考えている自分に呆れてしまう。




玄関に着き、靴を履き、上履きを…捨てようとしたが近くにゴミ箱が無いので鞄に入れる。
ついでに胸元に着いていたリボンも。


靴を履いてゆっくりと校門に向かっていく。



退屈だった学校生活。
それが蔵馬によって大きく変えられた。
飛影にとって、それは確かに初恋だった。
その初恋は、甘くて、そして酷く苦いものだったけれど。




まぁ、悪くなかった…。



「先輩!!!」

突如、背後から掛けられた、声。


振り返ると、そこには息を切らして立つ、蔵馬の姿。
赤い薔薇の花束を両手で大切そうに抱えていた。

「あの、これ…!!」
思い詰めた面持ちで花束を差し出す蔵馬。

その様子飛影はただ黙って見詰めた。

「約束、破ってごめんなさい。
でもこれだけ、受け取ってもらえませんか?
あの花壇に初めて植えたバラです。卒業する先輩に渡そうと思って、ずっと…大事に育ててきたから…。」
震える蔵馬の声から必死さが伝わる。



一体どれだけ前から別れを覚悟して俺を想ってきたんだこいつは。

「花だから…枯れたら捨ててしまうものだから…後腐れも無いし…。」
よほど受け取って欲しいのか、珍しくマイナスな言い方をする蔵馬が何だか可笑しい。

「でも…ずっと…私と先輩を見てきたバラだから…」

また泣く…。
どうしてお前はそんなにも俺を…。
俺なんかを…。

どうしてこいつの泣き顔は、こんなにも綺麗なんだ。



「私の…先輩への…想いだから…。
どうか、お願いします…。」

ゆっくりと、手を出し蔵馬から花を受け取る飛影。
蔵馬の手は微かに震え、ここに来るのにどれだけの勇気が要ったのか理解できた。

そんな蔵馬の勇気に誘われるように、飛影の口元が緩む。
「俺にバラなんて似合うわけ無いだろ…。」

花束を見詰めポツリと呟くその声はいつもの素っ気ない、けれど優しい、蔵馬の大好きな声で…。

「そんなこと無いです。先輩の瞳と同じ色…。私、一番…好きです。」
自然とその言葉を口にしていた。


好きです。


まだ、好きです。


そう、伝えていた。




…お前は本当に強い女だな。
俺にも…そんな強さがあれば…。

「ほら。」

わざとらしい溜め息と共に、徐に拳を突き出した飛影。
「貰いっぱなしは性に合わん。」
「え…?」
蔵馬の掌にポトンと落とされたのは、飛影の制服の第二ボタン。


途端に蔵馬の大きな瞳から溢れるいくつもの雫。

「先輩…私、忘れなくても良いんですか?
まだ、好きでいても…?」
ボタンをぎゅっと握り締め、濡れた瞳で飛影を見詰め、問い掛ける。


その様に飛影は再び溜め息を吐いた。
今度は小さく。

何かを諦めたように。
そして…


「…好きにしろ」
いつか言った言葉を返した。


すると、予想通りの綺麗な笑顔。





あぁそうだな…。
諦めよう、忘れなくて良い。

俺も、忘れることを、諦めてみよう。

どこまで持つか判らないけど、ただお前を想ってみよう。お前のように。


それに耐えられたら、きっと、


そのときのお前を受け止めれる強さくらいは、得られてると思うから。



「南野…。」

「はい…?」

「そんなに忘れないって言うなら、一年経ったら俺に会いに来い。そしたら、付き合ってやっても良いぞ。」

「!?」

今はまだ、こんな言い方しか出来ないけど…。

本当に、俺の前に現れたら、その時は覚悟を決めてお前と向き合おう。


そして、今度こそ伝えよう。


俺もずっと、好きだったと。



「じゃあな…。」

短い別れの言葉と柔かな眼差しを餞別に、飛影は校門へと歩き出す。

「あ…先輩っ…。」
飛影は振り返らないけど、初めて言葉を交わしたあの時の様に、その背中すら優しくて…。


「先輩!私…ずっとずっと、好きでいますからね!!」
精一杯の想いを告げた。


「でかい声で喚くな。相変わらずおかしな女だな。」

少し振り返り、いつか言った言葉をまた投げ掛ける。ほんの少し眉間にシワを寄せ、照れ臭そうに。
そして今度こそ振り返らずに門へと向かった。

校門を抜け、去っていく後ろ姿を蔵馬はしっかり瞳に焼き付けた。
鮮明に残せるように、今度は涙を我慢して。


飛影の姿が消えると、抑えていた涙が再び溢れ、蔵馬の頬を濡らす。

その涙の先、掌には飛影の金ボタン。
その感触を確かめるように強く握り締めた。



少しだけ寂しいど…大丈夫…。

これからも、あの思い出の裏庭で、あの人を想っていよう。
バラと、このボタンと一緒に…
ずっとずっと。






そして、誓いのキスのように優しくボタンに口付けた。






end




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



お、お疲れさまです~( ̄▽ ̄;)

本当に長かったですが…。
これで蔵馬ちゃんの中学生編は終わりでございます(*^-^*)



やたらと長い拙すぎるお話をここまで読んでくださって、本当に有難うございました。


次は女の子蔵馬ちゃん『高校生編』でございます。
相も変わらずお子ちゃまなお話ですが、んもうラブラブになっていきますので、
かーーー!何やってんだよお前らは!なんて突っ込みながら読んで頂けたら幸いです~(*´∀`*)




ここまで読んで頂きまして本当に有難うございました~(*´∀`*)





拍手有難うございます~!!
幸せ一杯です(*´∀`*)
プロフィール

舞彩

Author:舞彩
名前/舞彩(マイ)
生年月日/19××年2月3日
出身地/一番人口の少ない県
趣味/飛蔵(蔵飛も少々)のお絵描きやお話し作り。カラオケ。冬限定で編み物。ダイエット(悲しすぎる趣味)
好きなモノ/飛影と蔵馬!!
チョコレート。和菓子。メロンパン。カフェオレ。紅茶。通販雑誌(見るだけってやつ)
嫌いなモノ/カメムシ(殺虫剤で死なない恐ろしい虫!)、カエル、シイタケ、グリーンピース
幽白歴/約22年。昔と変わらず(それ以上?)今もこの作品、そして飛影と蔵馬を愛しています!

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