ぷんぷん蔵馬さん続き

俺は…本当に怒っていたんだ。



飛影と一ヶ月会えなくて…会いたくて思いきって百足に行ってみた。
何しに来たんだと、怒られるかもしれないけど…。トーナメントも近いし、久々に手合わせをしても良いなって…そう思っていた。それならきっと喜んでくれるって…。

なのに…。


一ヶ月振りに見た飛影はポットの中で、手も足も千切れて管で繋がれて、顔もようやく復元出来てる…という有り様だった。

あまりの酷い状態に頭が真っ白になった。

我を取り戻した後に俺が取った行動は、時雨を捕まえて事情を聞くことだった。


時雨が言うには、(彼も実際見たわけではないらしいのだが)何でもパトロール中に会った妖怪と揉め、怒りに任せて攻撃を仕掛け、そいつの罠にあっさりと引っ掛かった結果だという。
それも、相手は飛影より格段に低い戦闘力だったにも関わらず、らしい。




どうして…。
約束、したのに…。




魔界で一年間離れていたとき、飛影が時雨と戦って死にかけたと聞いた。
…正確には、死を選んだと。

それを聞いた俺は、居ても立っても居られず百足に潜入した。
どうしても会いたくて…。
そして想いを伝えたくて。


俺の言葉に酷く驚いた様子だったけど…貴方は言ってくれたじゃないか…。

「欲しいものが手に入ったから、もう死に急ぐような真似はしない。」
と。




哀しみと、訳のわからない怒りが込み上げた。


本当に暫くは口もききたくないと思って…これ見よがしに風華円舞陣を発動して挑発的な態度を取った。
何故俺が怒っているのか、きっと判っていない飛影に理由をぶちまけて、立ち去ろうと思っていたのに…。


彼の口から出たのは…滅多に聞けない素直な謝罪、そして


「俺は…顔が…見たいんだが…」



一気に俺を有頂天にさせるほどの優しい殺し文句だった。



狡いよ…そんな言い方。

そんな風に言われたら…。



今貴方がどんな顔してるのか、見たくなるじゃないか…。



欲求に勝てなくて、ゆっくり振り向こうとした、そのとき…


「その辺で許してやれ。」

すでに許してしまいそうになっているなどと思っていなかった女帝から声を掛けられた。

「躯…。」
突然の魔界の大物の登場に、僅かながら緊張が走る。

「久し振りだな、狐。まぁそう嫌な顔をするな。飛影、お前もだ。」

「うるさいぞ躯!何しに来やがった!!」

「ん~?可愛い部下を助けに、な。」
そう楽しそうに言う躯の顔は、姉のような母親のような…そんなどこか優しい顔をしている。
この柔らかな顔を誤解して何度嫉妬した事だろう。

「いらん世話だ!」
そんな母の思いを無下にするのはどこの世界の息子も同じようだ。

「まぁそう言うな。おい、狐、何故こいつが無茶な戦いをしたか知ってるか?」

「…え?」

何故…。
それは俺も気にはなったが、誰も教えてくれなかった。

「こいつは一緒にいた部下には口止めしてたみたいだがな、俺には無駄なことだ。ポットにいる間に記憶を見てやった。」

「んな!?また貴様勝手に!!」
声を荒げる飛影を無視して躯の話は続く。
「こいつを重傷にした相手は、狐、お前の知り合いらしいぞ。」

「え…?」


「きっ…貴様っ!黙れ!!」
耐えられなくなった飛影が躯に襲いかかる。目に見えない早さで剣を振るが、そこはさすがお母さん。見事な身のこなしで息子の攻撃を交わし話を続ける。


「名は確か…『鷸(しぎ)』とか言ったか?」

あぁ、そんな奴もいたな…。
顔も思い出せない、そんな程度の大昔の知り合いだ。

「お前たちの仲を知っているんだろうな。お前とその昔一夜を共にしたときの話を事細かに話して聞かせたらしい。それで我を忘れて突っ込んだようだぜ。」

「くっ…!!黙れ!!いい加減にしろ!!」
正に今、我を忘れるほど怒りまくって攻撃している飛影。どうにか躯の口を塞ぎたくて必死だ。
もっと話しを聞きたい俺は今回は彼を応援できない。

「こいつが意識を手放す間際、何を思ったと思う?
激しい後悔と自分への怒り…その先にあったのは、心配そうに自分を見詰めるお前の顔だ。」


とうとう躯は飛影を地面に叩き付け背中を片足で押さえ付けた。
飛影はどうにか躯の脚をはね除けようともがくが、彼の身体と地面を貼り付けさせるその細い脚はびくともしない。

怒りを露にする飛影とは対照的に、俺の心は歓喜が支配してきている。




「なぁ狐、見ての通りこいつは俺らに比べたらまだまだ子供だ。そんな子供にお前は惚れたんだ。お前が多目に見てやらなくてどうする。」

涼しい顔で飛影を押さえ付けながら俺を見詰め、窘めるように話す躯。
「それに、こいつはそこまでバカじゃない。あの時の後悔と怒りは相当なものだっだ。もうあんな馬鹿な真似はしないさ。なぁ、飛影?」
「う…うるさい!!早く退けろ!!」
笑いながら親バカとも言える言葉を放つ躯に、顔を赤くして怒鳴り付ける飛影。

そんな、ちょっとみっともない姿の飛影がなんだか可愛く見え…。

顔が緩むと同時に恥ずかしさが襲ってきた。
馬鹿馬鹿しい恋人とのやり取りを母親に全て覗かれたような気分…。(実際に覗かれたのだが…。)

思わず顔を反らす。



そんな俺の態度に躯が小さく笑ったのが判った。

「…どうやら機嫌は直ったようだな。」
俺の心情を見透かしたようにそう呟くと、やっと飛影を押さえている脚を退けた。
途端に素早く立ち上がり間合いを取る飛影。彼はまだ臨戦態勢のようだ。
今にも黒龍を召喚する勢いで躯を睨み付ける。

「止めとけ、飛影。そんなもん俺には効かん。それに…せっかく愛しの狐の機嫌直ったのに冬眠するつもりか?」
気付いた躯があっさり制止をし、
「まだ抽選まで時間がある。俺は消えてやるからそれまでよろしくやってろ。」
余計な一言を添え、去っていった。




「くそっあのババア…余計なことをペラペラと…。」
躯が去った方を見ながら剣を鞘に仕舞い悪態を吐く飛影。



その後ろ姿が堪らなく愛しく見えた。


無計画に突っ込んだのはやっぱり頂けないが…その理由がまさか嫉妬だったなんて。

大昔の自分の節操の無い行いを後悔しつつも、嬉しさは拭えない。


気付けば飛影の首に腕を巻き付けていた。



「ばか…。そんな事の為に…命を危険に曝して…。」
出てきた声は自分でも驚くくらい甘えた声。

その声で俺の気持ちが判ってしまったのか、飛影を取り巻いていた怒りの妖気があっという間に消え失せた。
「機嫌…直ったか…?」
飛影の声も酷く優しくて…。

「直ってないよ…。無駄に死にかけたことはまだ怒ってるんだからね。」

回した腕に力が入る。

「そうか…。」

「そうだよ。だから、まだ顔は…見せてあげない…。もう少し、このまま…。」


二ヶ月分の寂しさと、怒りを込めて…きつくきつく飛影にしがみつく。

そんな、言葉とは裏腹な態度を取る俺に、飛影がふっと笑い…俺の手をそっと握り締めた。






おしまい(*^-^*)




長々と失礼しました~。
ここまで長くする予定はなかったのですが…。あれこれ考えてるうちにだらだらと…。


ここまでお読み頂き、ありがとうございましたm(*-ω-)m





捕捉落書き…

「おい、もう良いだろ…顔を見せろ。」


「もう、一度…約束してくれたら…良いよ。」

「約束?」

「もう、二度と無茶な戦い方はしないでね。トーナメントでも、だよ。」

「よく言うぜ…。いつもお前のがボロボロになるくせに…。」

「俺は!それでもちゃんと慎重に、相手を見極めて戦ってますよ。貴方みたいに無茶してる訳じゃ…。貴方と付き合ってからは特に…常に生き残ることを考えてます!」

「そうか…。」

「約束…してくれます?」

「あぁ、判った。」

「絶対だよ?」

「お前を残して死ねるか。」

「うん…。」

「だから顔見せろ。見せないならこのまま俺の部屋に連れてくぞ。じっくり見てやる。

「もう…。何言ってるの…。クスクス

「お前ら…どうにかしろとは言ったけど…。そこまでしろとはいってねーぞコラ!」



お粗末様でした☆








コメント御礼

☆ゆきさま

飛蔵deアンパンマンへのコメント有難うございます!!
楽しんで頂けたようで、嬉しい限りです~ (p*''v`*q)
私も何気にドキンちゃん躯がはまり役かな…と思っております(笑)あの威張りっぷりが♪でもそうなるとしょくぱんまんが悩むところですが…(^_^;)
う~ん…(´-ω-`)

楽しくなってきたのでまた描こうかなとおもっております♪ゆきさまのお言葉で新たな世界が開きました(^ω^)
有難うございました!
ゆきさまのイラストも見てみたいです!ぜひ!飛蔵へも挑戦して下さいませ~(*^-^*)



☆はるさま

コメント有難うございます (p*''∀`*q)
ぷんぷん蔵馬さん、お気に召して頂けました?
カッコ良く描こうと頑張ってみたのでそう言って頂けるととても嬉しいです!
私は蔵飛も好きなので、時々あんな感じの絵も描いてみたくなるんですよね (*''∀''*)今回はあくまで受けですが☆

そう!そして本当に幽白は男前多いですよね!
若様も陣も凍矢も、最近になって初めて描きましたがホントに楽しくて…。改めて素敵な作品だと思いました~♪






拍手有難うございます (。>∀<。)
幸せいっぱいです!!
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月と土星

僅かに秋の気配がする晩夏の夜、突然窓を開けた蔵馬が夜空を見上げた。
部屋の中に漂う夜風。
窓の下からは虫のキレイな音色が奏でられ、何とも良い風情を演出している。

突然の訳のわからない行動に怪訝な表情を浮かべた飛影だったが、頬に当たる風が心地よくて、何も言わずベットに横たわったまま蔵馬を見詰めていた。
後ろ姿からは蔵馬が何を思ってそんな行動を取ったのか判らないが、何かを探しているように見える。

「飛影、ちょっと部屋の明かりを消して貰えますか?」
夜空を見上げたままこちらを振り向きもせずそうお願いする蔵馬に、小さく舌打ちをしながらも、飛影は言われた通り部屋を暗くした。

一瞬にして暗闇が部屋を包み込む。
窓からほんの少し差し込む月明かり。

「あ!見えた!!」
突然嬉しそうに声を上げた蔵馬。
「…何がだ…;」
そんな蔵馬の後ろに立ち、飛影は呆れたように溜め息混じりで尋ねる。

「ん?今ね、天気予報を見てたんだけど…」
左手に持っているスマホを少し上げ続ける。
「今日は月と土星がすごく近付いて見える日なんだって。」
「どせい?」
なんだそれは。と言いたげな表情。
魔界生まれ魔界育ちの飛影が宇宙の天体など知る由もない。
予想通りの反応にクスリと笑いながら「こっちに来て」と手招きをする。

「ホラあそこに月があるでしょ?そのとなりに…」

「あのわっかのあるやつか?」
飛影の言葉に驚き隣を見ると邪眼が開かれていた。
「うん、そう…そのわっかのあるやつ。綺麗でしょ?っていうか… 邪眼って天体も見れるんだ~。望遠鏡いらずだねぇ。良いなぁ~。」

素直に羨ましがる蔵馬に飛影の口元が緩む。
すぅっと手を上げ、蔵馬の額に当てると…
「まぁ限界はあるがな。…目を閉じてみろ。」
そう促した。
「うん…。」
瞳を閉じた蔵馬の額に飛影の妖気が集まる。すると…
「うわ…綺麗…。」
瞼の裏に映し出された土星。
取り囲むリングもハッキリと見える。

「すごい!こんなにハッキリ見たの初めて!なに?念写?」
翡翠色の瞳を輝かせ喜ぶ蔵馬に飛影は満足そうに手を離し、
「で、あの星が何だって?」
先程の蔵馬の話に戻した。

「あ、そうそう、ホラ月の横に寄り添うように見えるでしょ?天気予報のとこに『月と土星がランデブー』なんて書いてあってさ、せっかくだし見えるなら見たいなぁと思って。それだけ♪」
一体何がそんなに楽しいのか判らないが、ニコニコと笑いながら話す蔵馬に少し呆れつつ、拍子抜けした飛影。

てっきり…
「それだけか?七夕みたいな話があるんじゃないのか。」

まただらだらと物語を聞かせられるのだと覚悟していたのに。

「うーん…どうだろう…。惑星が発見されたのは人間の歴史の中でも最近の事だからね~。 占い的なものはよく聞くんだけど。 」
飛影が自分の話を聞く体制であったことに気付き、さらに嬉しそうに話す蔵馬。
黙ったままの飛影を『話しても構わない』と、解釈した蔵馬はさらに続ける。


「土星の向こうには天王星っていう星があるんだけどさ、それが見付かるまではずっと土星が一番遠くの星だと思われてて、この世の果てを表す星だったんだって。だから、不吉なことは全部土星のせい…みたいな感じだったみたい。いい迷惑だよねぇ。あんなに綺麗なのに。」

「ただそこに存在しているだけなのに不吉の象徴か。確かにいい迷惑だな。」
意味深な言い方をした飛影に蔵馬が優しく微笑んで返す。
「あ…今自分みたいって思ったでしょ?」
全くもう…


少し困ったように言いながら立ち上がると、部屋に備え付けてある小さな冷蔵庫から缶ビールを二つ取り出し、一つ飛影に渡した。
プシュッと良い音が小さく響く。

「ハイ乾杯☆」
コツンと缶を当て呑み始める。

「でも、そうだね。飛影みたいかも。」
一口呑んだ蔵馬が再び話し始める。
飛影は黙ったまま缶に口をつけ、呑み進めている。
「よく知られてなくて、相手に悪い印象を植え付けちゃうとことか?」
俺だって初めて会ったときは最悪だったよ~。何せイキナリ切りつけられたんだもん。そのあとだって…ちっとも優しくしてくれないし。


相変わらずクスクス笑いながら話す蔵馬。

「でもさ、技術が進むとどんどん鮮明に見えるようになってね、あの土星の魅力的な形が人間の心を掴んだんだろうね。今はすごく人気者なんだよ♪
うん、飛影っぽい~♪」

「誰が人気者だ、誰が。酒一口で酔ったのか貴様。」
からかうような言い方に飛影が少し不機嫌そうに口を開いた。

そんな飛影をものともせず話しを続ける。
「えー?飛影は人気あるよ~?躯だって時雨だって、百足の人たちも皆、貴方のこと気に入ってるじゃない。

それに。
幽助や桑原くん、ぼたんにコエンマ、…雪菜ちゃんだって、貴方をよく知る人たちはみ~んな、貴方が大好きだよ?

まぁ俺はそんな人たちなんか足元にも及ばないくらい、貴方の事『愛してる』けどね?」

にっこりと、極上の笑顔で愛の言葉を紡ぐ蔵馬にさすがに恥ずかしくなり、顔を背けごくごくとビールを飲み干した。

「今日の月みたいに、ずーっと貴方に寄り添ってるからね。」

「ふん…。」

テーブルに缶を置き、照れ臭そうに蔵馬を睨み付ける飛影。

その鋭く暖かい深紅の瞳に、蔵馬の核が跳ね上がる。


この輝きに自分は何度魅入られた事だろう。
もっと近くで…近くで、見たい。


それはきっと、この星の人間たちが宇宙に思いを馳せる気持ちとよく似ている。
もっと近付きたくて、もっと知りたくて…。
その想いは果てることなく続いていく。




蔵馬はまだ半分残ったビールをテーブルに置くと、吸い寄せられるように飛影の唇に自分のものを重ねた。

「うん、やっぱり月は嫌だな。」
そっと触れただけの唇を離すと、蔵馬が飛影を見詰めたままそう告げる。

「寄り添うだけじゃ寂しいね。重なりたい。」




これ以上ない蔵馬の誘い文句に飛影の理性が消し飛んだ。

窓が開いていることも忘れ部屋の片隅で重なり合う。



気付けば月と土星は闇の彼方へ消え、空には星だけが輝いている。

その輝く星も霞んで見えるほど、二人は目の前の緋と翠の輝きに魅入られ、お互いを強く求め合っていた。


「どうした…今日は…。やけに目を閉じずに頑張るな。」

いつもと違い、瞳を開けたまま自分を見詰める蔵馬をからかうように飛影が囁く。

その艶のある低い声に羞恥心が煽られる。思わず顔を背けそうになるが、どうにか耐えた。


「う、ん…。何か今日は…見て、たいなって…。」

飛影が与える律動に揺さぶられ、意識まで飛びそうな快楽の中、必死に言葉を紡ぐ。

「だ、から…飛影も、目…閉じっ…ないで…俺の事…見てて、ね?」


まるで煽るかのような蔵馬の言葉と態度に、飛影の欲がより一層駆り立てられる。
「あぁ…。望むところだ。根を上げるなよ?」
手加減しないからな。

不適な笑みを浮かべ呟くと、飛影は再び身を進め、蔵馬を深い快楽へと引きずり込んだ。



もっと近くに、
もっとそばに、
瞳から伝わる尽きることのない想い。

互いの色に包まれ、その輝きに酔いしれながら、二人は本格的に訪れた夜の帳に身を任せた。






おわり






土星関係なくなっちゃった(^_^;)

そして月と土星と一緒に火星も見えてるはずなんだけど…まぁ、いいか;





長々と失礼しました(^_^;)
日曜日、スマホで天気予報を見てましてね、そしたら本文中にあるように『月と土星がランデブー』なんて文字が目に入りまして…。

ちょっと書きたくなりました。
好きなんですよ、星…(*^-^*)
でも、やっぱり一日で仕上げると言うのは無謀でした;(当たり前だ!)


すんません…(-_-;)

でも、久々にパラレル以外のお話しで、書いた私はとても楽しかったです~♪指疲れたけど(笑)

ここまで読んで頂いて有難うございました!



拍手有難うございます!!
本当に嬉しいです~(*´∀`*)

星空を君に(飛蔵ミニ小説)

間に合わなかったーーーー!

一度やってみたかった季節モノ。
まず手始めに七夕だ!!
と思っていたのに…。
間に合わせることが出来ず…。
(そもそもド素人のクセに一日でお話しを作ろうと思うことが間違い)

止めようかなと思ったけど…。
せっかく作ったので…。
記録がてら載せてみます。
なんかいろいろ間違えてそうだけど…。そして誰かとカブってそうだけど…;
笑って許して下さい。




【星空を君に】



「あ~ぁ…残念…。」
月曜日の朝、身支度を整えていた蔵馬が窓の外を見上げ、ぽそっと呟いた。
「何がだ。」
恋人の独り言を聞き逃さなかった飛影がベッドに入ったまま肩肘を立てて蔵馬に問い掛ける。
月曜日の慌ただしさなど無縁の妖怪である飛影はまだ裸のまま。
「ん?今日は七夕なんですよ。前に話したでしょう?」
「あぁ人間界の昔話か…。」

恋にうつつを抜かして神の怒りを買い、大河を挟んで引き裂かれた男女。
そして悲しみに暮れる二人を憐れに思った神に許された、年に一度だけの逢瀬。
以前蔵馬から聞いた恋物語だ。

馬鹿な二人がいたものだと飛影は思った。

そんなに悲しいなら言い付けなど無視して会いに行けば良いのに。大河が何だというのだ。
しかも会えるのは年に一度、晴れた日。
そんな日を待ちわびるくらいなら、何年かかろうが激流にも負けない船でも作れば良いのに…と。
それとも年に一度だけで満足する程度の想いなのか。


そんな馬鹿で根性なしの男と、そんな男に惚れた馬鹿な女は、今年はどうやら会えないらしい。


「この天気じゃあ星は見えそうにないから残念だなぁって。せっかく貴方がお休みでいてくれるのに。」
「星が出てようが出てなかろうが関係ないだろう。俺がいることに変わりはない。」
残念そうにする蔵馬に飛影は呆れたように返す。
「気分の問題ですよ。せっかく七夕に貴方がいるんですから、星が見えた方がロマンチックじゃないですか。」
妖怪のくせに相変わらず人間の、それも女のような事を言う奴だと本気で呆れたが、それも自分との時間を楽しみにしているが故だと飛影は思い直し、これ以上は何も言わないことにした。

「ま、飛影がいるならそれで良いんですけど♪
今日は母さんもデートでいないし、ご馳走作りますから、楽しみにしててくださいね。」

楽しみにしててと言いつつ、本人が一番楽しんでいる様子の蔵馬。
「判ったから、さっさとガッコウへ行け。」
溜め息混じりに言い放つ飛影に「はぁーい」と笑顔で返し「あ、飛影、いい加減服を着てください」と付け加え蔵馬は部屋を出て行った。

「ちっ…」
一人になった部屋でわざとらしく舌打ちをした飛影は、それでも素直に服を着ると蔵馬が帰ってくるまで適当に時間を潰すべく部屋を出て行った。
もちろん、窓から。





夕方、買い物袋を片手に蔵馬は学校から帰宅した。
雨ではないものの、空は相変わらずの曇天。玄関を開ける前、蔵馬は朝のようにちょっぴり残念そうに空を見上げた。


「飛影、ただいま。」
妖気で飛影が部屋に居ることを確認した蔵馬は、部屋のドアを開けながら声を掛ける。

飛影は何時ものように窓辺に腰を掛けていた。
飛影が「おかえり」なんて言わないのも何時もの事。
でも。

何時もと違うことが…。


彼は瞳を閉じ、少し顔を上げて何かを探っている。
その額には第三の瞳が開かれ、邪眼師特有の妖気を放っていた。

…何をしてるんだろう…。

気にはなったが、何やら真剣な顔をしている飛影に声を掛けるなんて事はせず、手早く着替えると蔵馬は約束した『ご馳走』を作りにキッチンへと向かった。



二時間後。
食事の準備を終えた蔵馬はエプロンを外して椅子に掛けると自室へと向かった。

「飛影~食事の準備が出来ました…」
そう言いながらドアを開けた蔵馬。
その視界に入ってきた愛しい恋人の姿は…

先程と全く変わらないものだった。

飛影は尚も窓辺に座り邪眼を開いたまま何かを探っている。

…いくらなんでもあんまりじゃないだろうか…。
俺といるのに、約束していたのに、俺以外のモノを見ているなんて…。

「飛影?」
蔵馬は少し声のトーンを落として呼び掛けた。
…返事はない。
「飛影?聞こえてますよね?」
再度呼び掛ける。…が、返事はない。
「何を見てるんですか?」
返事はない。
「俺より大事なものですか?」
………返事は、ない。

「~~~~っもう良いです!!」
蔵馬がそう叫んだ直後…

「きた!!!」
突然叫びながら深紅の瞳を見開き立ち上がる飛影。
「?!」
と、同時に蔵馬を抱え窓から飛び出した。

なになになになに???;

蔵馬を脇に抱えたまま物凄いスピードで夜の空を駆けていく飛影。
そのあまりのスピードと突然の出来事に蔵馬はらしくもなくパニックになり、何も言うことができずただ運ばれていた。



どれくらい飛んでいるのだろう…。
抱えられている居心地の悪さやスピードにも慣れ、落ち着きを取り戻してはいたが、いきなりこんなことをされた怒りより呆れと疑問の方が大きく、蔵馬は何も言わず飛影にされるがままに大人しく抱えられていた。
「?!」
突如、身体がフワッと浮いた感覚が蔵馬を襲う。飛影が急降下したのだ。

やれやれ…。
やっと真意が聞けそうだな…。


もはやここが何処なのかも蔵馬には判らない、どこかの山の中へと降りていく。
大木の枝に一度乗り、飛影は地面に降り立ち、蔵馬を立たせた。
乱暴に連れてこられた割には優しい扱いだ。
でも、
「で?一体何なんですか?料理…冷めちゃいましたよ。」
嫌味の一つは言っておきたい。
何せこっちは靴すら履いてないのだ。


だが、飛影はそんな蔵馬を見て楽しそうに笑っている。
怪訝な顔をする蔵馬に、
「上。」
飛影は空を指差し仰ぐ。

「あ…」
「俺と、見たかったんだろう?」

蔵馬が見上げると、そこにはポッカリ空いた雲の隙間から星空が覗いていた。
満天とまではいかないが、天の川、そしてアルタイルとベガも確かに見えている。

「ずっと…探してくれてたの?」
先程までの憤りはどこへやら…蔵馬はあまりの嬉しさに声が震えていた。

「今日はこの国は何処もかしこも雨らしいな。雲が晴れる場所を探すのに手間取った。」

きっと飛影は太陽が沈んでからずっと邪眼で探してくれていたのだろう。
あの家から飛んで行ける距離一帯をくまなく。
僅かに雲が晴れるその時を待って。

長時間邪眼で広範囲を覗くのは相当の集中力がいる。
蔵馬の問い掛けに答えられなかったのも無理はない。

「飛影…有難う…。すごく、嬉しい…。」
最高の笑顔と共に蔵馬から出た感謝の言葉。

「あぁ…。お前とあの馬鹿な夫婦を見届けるのも悪くないと思ってな。」

飛影らしい理由に蔵馬は楽しそうに笑いながら腰を下ろす。
「では、しばらくここで見届けますか…。ご飯は冷めてしまいますが。」
そんな蔵馬を満足そうに見ながら飛影も蔵馬の隣に座った。



二人で草むらに座り夜空を仰ぐ。
「俺ね…」
星空を眺めながら蔵馬がポツリと話し始めた。

「この七夕の物語、貴方の言うとおり、馬鹿な二人だなぁって思うんですけど…気持ちは判るんですよね。」
「何がだ。」
突然何を言い出すのか…飛影は溜め息と共に返す。

「愛しい人と一年離れ離れになる辛さと、一年振りに会える嬉しさは。」
俺も…そうだった…。

魔界で一年、対立する国でそれぞれ過ごしたことを思い出し、蔵馬の瞳に僅かに憂いの色が浮かぶ。

「だから雨だとほんの少し可哀想に思うんですよね。あの二人はさらに一年会えないのか…って。だからこうして星空を見れて嬉しいです。きっと、会えてる…。
俺も馬鹿みたいでしょ?人間の作った物語にこんなふうに感情移入して。」

「蔵馬」
蔵馬の話しに耳を傾けていた飛影が、それを遮るように呼び掛けた。
こんな顔を見る為に連れてきたんじゃない。
ただ、喜ぶ顔が見たかったのに。

「俺はあの男みたいに手に入れたものを手放すようなバカじゃないぞ。」

あの離れていた時間、確かに半ばやけになった。躯がいなければきっと死を選んだことも事実。
だが。
やっとずっと欲しかったものが手に入ったのだ。みすみす手放すような馬鹿な真似はしない。まして年に一度などで満足などするものか。
だからこそ、こうした休みを貰うために、あの女の怒りを買わないために、あんな面倒臭いパトロールなんてものを真面目にしているのだ。

「あの二人はその現状に満足してるんだろう。可哀想などと思う必要などない。俺には考えられんがな。」

すっぱりと言い切る飛影を、蔵馬は瞳をぱちくりとさせて見詰めていた。


え~と…。
これは…俺が不安に思ってると…気遣ってくれているのかな?
…参ったな…。
そんなつもりじゃなかったんだけど…。
本当に、嬉しいのに。

むしろ、今幸せだからこそ、あの二人も会えてると良いな…なんて柄にもない事を思っているのに。


「だから余計な事を考えずにヘラヘラ喜んでろ。何の為に今日休みを取ったと…。」
「え?」

しまった…。
口を滑らせた…。

「飛影…七夕だからお休み取ってくれたの?」
「……;」


そう、飛影は今日この七夕に合わせて休みを申請した。蔵馬に7月7日は恋人が逢瀬する日だと聞いていたからだ。別に飛影にとってそんな人間界の昔話などどうでもいいが、『恋人同士が会う日』に、蔵馬に自分以外の奴と過ごして欲しくなかったのだ。


そんな飛影の気持ちは、
蔵馬にも伝わってしまって…。



飛影…。
七夕なんて全然気にしてないかと思ってた…。
今朝だって関心無さそうにしてたし…。
それに…休み希望出すと躯に俺との事をからかわれるからって…嫌そうだったのに。

七夕は恋人同士が会う日だと俺が言ったから…?

どうしよう…。顔が…熱い…。


「え…っと……。ありがと…。すごく、嬉しいです。」
「……。」

夜で良かった。月も出てなくて良かった。
妖怪の二人に闇など関係ないが、それでも。

真っ赤になって破顔しているお互いの顔を曝されなくて済む。


光輝く恋人達の星の下、赤い顔で寄り添い合う二匹の妖怪。


くそっ!!
貴様らなんぞ年に一度でも過ぎるくらいだ!!

飛影は、今頃自分達と同じように寄り添っているであろう天空の二人に、赤い顔のまま毒づいた。

end






長々とすみません…。
『蔵馬さんの為に晴れてる場所を探す飛影』を書きたいなぁと、昨日の朝、雨が降っているのを見て思ったのです。


私も七夕に晴れた夜空を見てみたい。(なんか七夕っていっっっつも天気悪いんだよな~;)


来年は晴れることを、そしてもう少し上達した七夕話が書けていることを願う(笑)






拍手有難うございます~!(*^^*)
あなた様の拍手が私の原動力です!!





交渉(飛蔵ミニ小説)

またもや無謀にも作ってしまいました。
迷いましたが、せっかく作ったので載せてみます。
すみません…。(先に謝っておこう…;)




【交渉】



「海?」

「そ!皆で海行こーぜ!」

日曜日、飛影と二人でまったりと過ごしていた蔵馬の元へ幽助と桑原がやって来た。
やれやれと思いながらも、蔵馬はいつものように笑顔で出迎え、二人にコーヒーを出す。
飛影はというと、あからさまに不機嫌なオーラを出して窓辺に座り込んでいる。
とは言え、飛影の事をよく知る二人なので、さして気にする様子もなく幽助はこの夏のレジャーのお誘いを切り出したのだ。



「ほら最近よ、皆で集まることって少なくなったろ?コエンマやぼたんも呼んでさ、海!!」
タバコを吸いながら話しを続ける幽助だが、遊びの計画を立てる彼の顔は子供のようで、魔族になっても相変わらずだなぁと蔵馬は笑顔のまま小さく溜め息を吐いた。
でもまぁ、
「いいね、海。俺も久し振りだよ。」
たまには皆で出掛けるのも悪くないと、幽助の提案に賛同する。
「よし!じゃあお前らも行くっつーことで、おい、桑原!帰りにレンタカーの手配しとこーぜぃ。」
「おお。でもこの人数だと一台におさまんねぇぞ。二台に分けるか?」
「あぁそうだな。」
楽しそうに計画を練る二人。
蔵馬はその様子を眺めながらコーヒーを口に運ぶ。
と、その時…。

「待て。」
楽しい雰囲気を一気に壊すような低い声。
今まで黙っていた飛影が突然割って入ってきた。
「貴様ら、さっき『お前らも』と言ったか?」
窓辺に座ったまま、顔だけを向けて幽助達に問い掛ける。

幽助と桑原はキョトンとした、蔵馬はあぁやっぱりか…といった顔を飛影に向ける。

「?あぁ言ったけど?」
それが何か?と言わんばかりの幽助と、
「ん?おめーも来るだろ?」
当然そうだろといった感じの桑原。

「俺は行かん。」
決め付けられた言い方に腹を立てた飛影は、思いっきり眉間に皺を寄せ言い放つ。
「え?!そうなんか?蔵馬が行くって言やー絶対おめーも行くかと思ったのに。」
「何故そう思う。」
「?だっておめーらいっつも一緒にいるじゃねーか。だから飛影も行くんじゃねーかと。」
「……」
幽助が自分と蔵馬の関係をどこまで知っているのかは知らないが、何故そんなふうに思うのか。
蔵馬が望めば大抵の事はしてやりたいと思ってはいるが、こうも他人に決め付けられると癪に触る。

「いいじゃねーかよ、飛影。雪菜さんが『皆で』行きたいって言ってんだよ。」
雪菜が飛影の妹であることはまだ気付かない桑原だが、無意識に飛影の弱点を突くところは流石だ。
だが、
雪菜…という名前に一瞬ピクリとしたものの、
「断る。」
素直じゃない飛影は今更行くなどとは言えない。
「え~行こーぜ~。飛影がいりゃ~バーベキューも楽に出来んだよ~。」
幽助らしい理由に蔵馬が思わず吹き出した。
「ふざけるな!俺の炎をそんなものに使えるか!」
蔵馬が笑ったことも手伝い、カッとなった飛影が立ち上がり幽助を怒鳴り付ける。
「こういうときに役立てねーでどうすんだよ。お前運転も料理も何も出来ねーんだからさ~。」
飛影の怒りを煽るかような幽助の言い方に今度は蔵馬が焦った。

まずい…。
このままじゃバトルになる。それだけならまだいいけど…。
家が火事になる。


「いいじゃないですか、飛影。行きましょう?」
宥めるように優しく飛影に話しかける蔵馬。
だが、飛影は顔を背け再び窓辺に座り込んでしまった。こうなったら飛影の機嫌はなかなか直らないことを蔵馬はよく知っている。
だが同時に、こんな状態でも飛影の首を縦に振らせる方法も、蔵馬は熟知していた。

蔵馬の交渉が始まる。

「俺は行きますよ?」

「勝手にしろ。」

「困ったなぁ…。」

「なにがだ。」

「俺、モテるんですよ。」

「………だから何だ。今に始まったことじゃないだろう。」

「今までの経験上、水着になると普段の五割増しでモテるんですよね。何故か男性にも。」

「…ならなきゃ良いだろ。」

「せっかくの海なのに俺だって泳ぎたいですよ。」

「服を着たまま泳げ。」

「うん、それでも良いんですけど…そういう水着もあるし…。でも海ってなんか…開放的な気分になるんですよね。これも経験上いつもで…。」

「何だと?」

「見張っててもらえます?俺が開放的にならないように。ず~っと傍にいて…。」

「……」

「お願いします。飛影がいてくれたら大丈夫だと思うので。ね?」


コクン


「幽助、桑原君、飛影も行きますよ。」

満面の笑みで振り返る蔵馬。

だが、二人の会話を聞いていた幽助と桑原は怪訝な顔で蔵馬を見ている。
口を開いたのは幽助。
「お…おぅ…それは良いけどよ…。」

「?どうかしました?」


「おめーらの仲の良さ、ちょ~っと違うんじゃねーか?;」

素直な疑問を二人に投げ掛けた。



end



小説って難しいね(+_+)


幽助たちにバレそうでバレない二人を書きたかったんだけど…。

懲りずにまた…(飛蔵ミニ小説)

身の程知らずにもまたミニ小説を作成してしまった…。
すみません…。

でもやっと出来た!モロ飛蔵なやつ!
ド素人が書いた完全な自己満足の世界ですが、見て頂けたら嬉しいです。





【トラウマ】



風呂上がり、鏡の前で蔵馬はクリームのようなものを髪に付けている。
薔薇の甘い香りが漂い鼻孔をくすぐる。
ベットで横になりながらその様子をじっと見詰めていた飛影。
「最近よくそれ付けているな。なんだ?」
飛影としては早くこちらに来てほしいのだが、何やら丁寧に作業をしている蔵馬に『良い子』に待ち、質問を投げ掛けた。
「これ?トリートメントだけど?良い香りでしょ?」
鏡越しに飛影を見ながら笑顔で蔵馬が答える。確かに香りは良い。だが、
「それは風呂場で使うものじゃないのか?」
魔界ではトリートメントはおろか、シャンプーさえ使ったことがなかった(というより見た事もない)飛影だが、こうして人間界で蔵馬と過ごすようになり、日常のある程度の事は判るようになってきた。
食事はきちんと箸を使って食べ、風呂に入れば蔵馬に教わったように掛け湯をして湯船に浸かり、ボディーソープで身体を洗いシャンプーで洗髪をする。トリートメントの説明も受けたが、さすがにそれは面倒でしなかった。だが、その説明の時、確かに「髪に付けて洗い流す」と聞いたのだ。
「あぁお風呂場にあるやつね。あれはそうだけど。これはね、お風呂から上がってドライヤーの前に使うトリートメントだよ。」
…また面倒臭い事を始めたものだ。よくやる。
飛影は半ば呆れ気味に溜め息を吐いた。
それを目敏く見付けた蔵馬。
「なに?溜め息まで吐いて…その呆れたような顔は。」
ドライヤーを手にして、ほんの少し責めたような言い方で鏡越しの飛影に問い掛ける。
その質問にやれやれといった感じで起き上がり、
「全く…アレコレと手入れして…人間の身体はそんなに傷みやすいのか?」
長く待たされているのだから…と、軽く嫌味を口にした。

だが、
途端、蔵馬の回りを取り巻く妖気が膨れ上がった。

「?!」
それは当然飛影にも判って。
思わず身構える。

見れば蔵馬はドライヤーを握り締め、鏡の前で固まっている。鏡越しから見える蔵馬の顔は俯いているため表情までは伺い知れない。
が、今すぐにでも妖狐になるのではないかと思うほどに膨れ上がる妖気に、ただ事ではないと察した。

「蔵馬…?」

声を掛けると、僅かに蔵馬の肩がピクリと動いた。
ゆっくりと振り返る。


そのときの蔵馬の脳裏にあったものは…。

髪、トリートメント、傷みやすい人間…これらの単語から連想される、黒い長髪の爆弾のクエスト。
首元に甦るあの感触。
纏わりつくような、あの、指…。
「…っ…」
…気持ちが悪い…。

だが、飛影がそんなことを知るわけもなく、ただ怪訝な面持ちで蔵馬を見詰めている。


「蔵馬?どうした?」
俺は何かしたか…?
振り返ったものの言葉を発しない恋人にいよいよ本気で心配になる。

「………な…いで…。」
「は?」
やっと聞けた言葉はあまりに小さな声でよく聞こえず、若干間の抜けたような声で聞き返した。
その声が引き金になったのか、蔵馬は突然顔を上げ…
「二度と言わないで!!!」
妖弧を思わせるような目付きと共に飛影に向かって怒鳴り付けた。
「…っ…な…にを」
さすがの飛影も言葉に詰まる。
「人間が傷みやすいって!俺が髪の手入れをしてるときは絶対に言うな!思い出しちゃっただろ!!」
「だ…から何を…」
「良いから!二度と言うな!そもそも俺はもう完全に妖化してるんだ!!判ったか?!」
「………」
普段の蔵馬からはあまり聞けない荒々しい口調に、完全に気後れしている飛影。
彼には一体何をそんなに怒っているのか判らない。
自分はそんなに酷いことを言ったのか?
否、この程度の事はよく言っている。
蔵馬だって俺の性格は熟知している筈だ。
だが、
「お前…一体何…」
「判った?!!!」
反論など許さないと言った蔵馬の気迫に、飛影も言い返すタイミングが見付からない。
そして、
「判ってくれないなら今日はもう何もシない!!」
トドメの一言に
「…わ…かった…」
こう答えるしかなかった。


その夜…


「ん…あ…」
灯りが消された部屋、ベットの中で絡まり合う二匹の妖怪。
飛影の少し乾いた優しい唇が首筋をさ迷い、頬に当たるチクチクした髪に蔵馬はくすぐったそうに身を捩る。

何時ものように甘い甘い一時…

では無かった。

「おい…もう…良いだろ…」
首元に顔を埋めたまま、焦れたように飛影が言う。
「駄目!まだ触ってて!」

そう、何故か今日はやたらと身体…特に上半身を触るように蔵馬に言われ、飛影はなかなか挿入を許してもらえずにいた。
勿論、蔵馬を愛撫することに何ら問題は無いのだが、蔵馬の肌に触れるだけでそれ以上は許されないなど、飛影にとっては拷問に近い。
無理矢理犯してやろうかなどと思ったりもしたが、蔵馬の様子から今日はさすがにマズイ気がした。
仕方なく
「蔵馬…もう…限界なんだが…」
下手に出てお願いをしてみる。
が、
「まだ感触が消えないの!こんな状態で貴方を迎えたくない!」
「だから…何の感触だ?」
「良いから!お願い!!今日はいくら痕付けても良いから!特に首のとこ触って!」
…それならそれでもう少し可愛くお願い出来ないのか?
反論はあったが、これ以上機嫌を損ねては行為そのものを止められかねない。
仕方なく飛影は再び蔵馬の首に唇を寄せた。

そして、やっと挿入が許されても…
「あっ!あぁっ!飛影っ!く…び…っあ!首に…キスして!触ってて!」
「………;」
やたらと『首攻め』を強要された飛影だった。

「??????;」
…一体何なんだ?


End






えっちにあれこれ注文をつける蔵馬さんと、それにたじたじな飛影を書きたかったのです。

失礼しました~(((^_^;)


プロフィール

舞彩

Author:舞彩
名前/舞彩(マイ)
生年月日/19××年2月3日
出身地/一番人口の少ない県
趣味/飛蔵(蔵飛も少々)のお絵描きやお話し作り。カラオケ。冬限定で編み物。ダイエット(悲しすぎる趣味)
好きなモノ/飛影と蔵馬!!
チョコレート。和菓子。メロンパン。カフェオレ。紅茶。通販雑誌(見るだけってやつ)
嫌いなモノ/カメムシ(殺虫剤で死なない恐ろしい虫!)、カエル、シイタケ、グリーンピース
幽白歴/約22年。昔と変わらず(それ以上?)今もこの作品、そして飛影と蔵馬を愛しています!

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